有権者の品格

今週末は法事のため、しばらく東京を留守にしていました。
さて、早速ですが本題です。私は日経ビジネスを定期購読しているのですが、その中の書評に「著者に聞く」というものがあり、それがとても興味深かったので、ご紹介させて頂きたいと思います。

著者に聞く
金美齢氏
『政治家の品格、有権者の品格』
-有権者の姿勢を正す本ですね。
 政治不信という言葉が、日本でよく使われます。もちろん、有権者に媚びる政治家にも問題はあります。ただ、それ以上に問題なのは日本の有権者の意識の低さです。常に、政治におねだりをする。何かを「やってもらう」ことばかり考える。負担は少なく、受益は多く。短期的な視野でそんなことばかり考えている。
 背景には、メディアの責任があります。とりわけテレビ。センセーショナル、スーパーフィシャル(表面的)、センチメンタルという3つのSで視聴率を稼ごうとしているのが見え見えです。軽佻浮薄としか言いようがない。
 例えば後期高齢者医療制度についてテレビ番組で、「これじゃ、姥捨て山です」と誰かがコメントすれば、そこを強調して映し出す。決まり文句が「政治は何をやっているのでしょうか」。
 医療費に対して相応の負担をするのはやむを得ないはず。そんな”もともな”コメントを私が言っても、そこはカット。「3つのS」に合致していないからでしょうね。そしてテレビの前の有権者は皆、弱者になったふりをする。
~後略~

とても共感できるお話です。前にも書きましたが、どんな形であれ今の政体であれば有権者である国民が政治家を選んでいるわけです。郵政解散で自民党を圧勝させたのも、前回の参議院選挙で民主党を躍進させ、ねじれ国会の形を作ったのも、国民の投票結果です。なのに人ごとのような態度、そしてテレビもそんなことはつゆほども言いません。
前々回の「so-onの野望」というおふざけ気味の記事にも関わらず、文武両道さんはとても現代の日本の問題点とも言えるべきものをコメントいただきました。
なので、それなりのお答えとなるべき記事をと思って書いたのがこの記事です。
妊婦死亡事件に対して、マスコミが墨東病院をある意味叩きに入りました。するとそれに目聡く反応して舛添厚生労働相が「けしからん!」と言って鼻息荒く墨東病院に乗り込み、忙しい最中1時間近くも時間を取らせ、終わってみれば「墨東病院も忙しい中~」とやり、「都には任せられない!」と言う。それに呼応して石原都知事が「国にこそ任せられない」と反論する。そこには本質論は何もなく、わかりやすい構図(都立病院が指定されているにも関わらず断った。当直も1人しかいなかった。だから妊婦が亡くなった。)でお涙頂戴と行政批判を繰り広げたマスコミ。その時流に乗り遅れまいと必死になる政治家。
そこが問題ではなく、医療費増大が亡国につながるとした20年ほど前の厚生省の論文から始まり、医療費抑制医師数抑制に走った90年代~現在。但し実際に医療費等が国家財政や各企業の健保組合を圧迫し、なりたたなくなっている。それは国民皆保険制度は現役世代が全てを背負い込む形で今まで続けてきたが、団塊の世代の大量定年を迎え、国の人口における勤労者の割合が減少してきて、収支バランスが悪化している問題があること。そのための一つの解決策であった後期高齢者医療制度は法案可決時には余り問題視せず、運用になってボロクソに言うマスコミ、野党。それに乗っかる与党政治家、そして現首相。この流れが医師不足を招き、医療現場に過度の負担を強いている。
また多少改善されたとは言え、医療報酬制度が一律なため、勤務医と開業医の労働強度が余りにも違い、大病院の勤務医のなり手が少なくなってしまっている。更に日本の医局制度では現場の場数が余り評価されず、論文数によって出世していく体制のため、若手が実力を発揮しにくく、優秀な医師の国外流出問題もある。これも、大病院の医師不足につながっている。
といったお話をして、さてどのように解決するのが今後の日本のためになるのか?と考えることが一番大事だと思っています。しかし、残念ながらそういったことを話してくれるマスコミ、政治家というのを余り見ませんし、我々有権者も関心を示しません。自分たちが心地よい被害者・弱者の立場でなくなるからです。
アメリカの大統領就任演説で、かのケネディは国民に「国が何をしてくれるのかではなく、国のために何ができるのかを問うてほしい」と呼び掛けました。まさにこの言葉を自問自答するべき時はないかと思うのです。
戦争が終結してから早63年。亡国の危機というものを意識せずに我々日本人は長く過ごしてきました。しかしそこには多くの人々の思い、考え、見識があったからこそだと思うのです。あらためて自分の持つ一票の重さを感じながら、そろそろと言われている総選挙の時の自分の行動を考えてみたいと思っています。

「有権者の品格」に10件のコメントがあります

  1. こんばんは〜
    民主党に一度は政権を担当させてみたいが、一度コケたら四半世紀は政権担当の機会は無いだろうから死ぬ気で頑張って欲しいものだ。
    民主党政権がまずやってみるべきと思うのが、政官産の癒着をぶっ壊す事と、公共事業に偏った感のある景気対策の方向転換かなと。
    あとは国会議員を減らしてそのぶん報酬を増やしたり定年を設けてもいいだろうと思うけど、自縄自縛はイヤがるでしょうね…

  2. げんきさん
    相変わらずお早いコメント、恐れ入ります[E:happy01]
    もし、イヤな思いをさせてしまったら大変申し訳ないですと最初に謝っておきます。
    どこの党を支持するのも良いことだと思いますし、それぞれの党にはそれぞれの長所があるんだと思います。
    但し我々有権者が「ちょっとやらせてみよう」と安易な気持ちで選択するのはどうかとも思うのです。例えば会社の人事でも、人を配置するのは「ちょっとやらせてみよう」と思って、「ダメなら仕方ない」と言ってしまうのはどうかといった類のお話です。
    我々は確かにとても薄いものではありますが、国の最高機関である国会の人事権を持っているわけです。その時々に支持する政党が違うのもなんらおかしくは無いと思いますが、そこにはそれなりの自分の成算が無いといけないと思うのです。
    例えばドイツは極めて民主的なやり方でヒトラー率いるナチス党を選出しました。腐敗を重ねていたワイマール体制下の既成政党に絶望したドイツ国民は、若き指導者率いるナチス党に託し、一時期は熱狂的に支持したのです。
    その選択の強烈なしっぺ返しをドイツ国民は12年後に受けることにになります。
    これは民主党をナチスなぞらえたのではなく、選挙の選択の失敗によっては亡国の危機に追い込まれることが民主国家では実際あり得るということを言いたいわけです。
    なので民主党を支持なさるのであれば、「今の日本にとって何はともあれ政権交代を起こすことが一番大事だ。それは人事は滞留すると腐敗・政策の停滞を招き、こういった激動の時代にとてもではないが対応できないからである。まずは民主党に政権を取らせ、日本に政権交代という緊張感を持たせる。これこそが今後の日本の礎となる」みたいに考えていただけると、とてもいいのになあと思ってしまいました。
    重ね重ねになりますが、もしイヤな思いをさせたら本当に申し訳ないです。

  3. おはようございます〜
    お気遣いありがとう(^^)
    いただいたコメント見て、
    「そうそうそれそれビンゴw」ってカンジでした(苦笑)
    郵政選挙といわれた時、世間の大半が勢いで小泉さんを支持した結果が今ですしね(功罪というか成果と滞留、両方ありましたね)、安倍さん福田さんも選挙で選んだ訳ではありません。もはや自民党なら間違いが無い、という訳ではないと思います。
    悩みは実質的な選択肢が自民党と民主党しかないので…
    どちらももっと支持されるよう頑張って欲しいものです!

  4. ここ1年、私塾で取り上げたテーマと本、
    文明論の概略、マックス・ヴェーバーの著作、
    丸山真男の著作、そしてこれから、ナチスに
    入っていきます。
    フランクルの「夜と霧」から、
    「西ドイツの精神構造」・・・・
    なぜ、ナチスが育まれたのか?
    現在の状況との対比、
    あなたとの視点と驚くほど似ている・・・

  5. 文武両道さん
    いつもながらコメントありがとうございます。
    文中にも書きましたが、文武両道さんからのコメントに対してお返事になっていないかも知れませんが、それを意識して書いてみた記事です。
    少しでも文武両道さんの思考のちょっとしたスパイスにでもなればいいのですが。
    では、これからも宜しくお願いします。

  6. 明治の野村投手が最優秀投手賞に輝くのは?
    最終カードの登板回避は残念です。
    ヘタをすれば勝ち点を落とすことにもなったのですから。
    投手の勝ち星は味方打線の援護次第ですから、
    最優秀投手が防御率で評価されるのは当然と思いますが、
    投球回数が東大の鈴木投手の半分では、本人も不本意では?
    かつての塾の藤原投手、早稲田の織田投手のように酷使の
    投球回数は問題外ですが、「六大学の品格」という点では?
    私としては塾と法政から2勝を挙げた、鈴木投手に
    防御率で3点台ながら最優秀投手賞をあげたい。
    それが「六大学の品格」では?

  7. 記録と記憶
    明治の善波監督は9回、野村君を登板させるに当たって、「規定投球回数は満たしているが、投げてこその記録だ」と野村君を送り出した。無死一、三塁のピンチを迎えたが、守備陣が野村君を励まし、これに必死にこたえ、0点に抑えた。
    1年生投手をシーズン初めから登用した善波監督の勇気、それに応えた野村君の今シーズンは見事でした。
    かつての江川投手が初めて負けたのが東大でした。
    彼は東大が必死に向かってくるので直球だけで勝負したのです。
    先輩、山中投手の勝利数記録にも江川は抜こうと思えば抜けたのに、こだわらなかった。
    江川投手の美学、「六大学の品格」を感じます。
    長島や清原は記録ではなく記憶に残る選手でした。

  8. 文武両道さん
    今日も東京大学の鈴木投手は投げ、しかも惜しくも1点差で負けてしまいました。しかし完投しました。
    これでこの4連戦中3戦を完投し、投げた球数は464球。歴史的な勝ち点は惜しくも逃しましたが、まさに天晴れな投げっぷりですね!
    敵ながら天晴れですし、最優秀投手にしてあげたいですね。
    また明治大学の野村君は去年の余りにも理不尽な決勝戦での判定の際に、広陵高校の監督が高校野球の体制を知っているにもかかわらずあれだけの猛抗議をしたことと言い、今回の善波監督の起用法と言い、監督にあれだけのことをさせたくなる位の人徳を持っている子なんでしょうね。
    島岡御大以来の「人間力野球」の伝統を、野村君に見いだすことが出来るのかも知れません。
    いずれにせよ相手チームに好選手が出るのは一面辛い部分でもありますが、「相手にとって不足無し」ということでとてもワクワクしますね。
    彼らとの今後の好勝負がとても楽しみですね!!

  9. げんきさん
    お気を悪くされていないなら幸いです。
    本当にどちらの政党も、もっともっと支持したくなるような素晴らしい政党になってほしいですね!

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