多事争論 -経済とグローバル化と日本の行く末

昨年の10月頃、リーマンショックがいよいよ本格的にやってきた頃、自分は日本の経済のファンダメンタルが落ち込んだわけでもなく、また金融機関もこのサブプライム関連の商品を余り扱っていなかったので自己資本を余り痛めることもなく、結果としてやるべきことをやれば案外早い回復もあるのではと思っていました。
しかし、今となってはこれはとても甘い見通しだったと言わざるを得ません。
これだけ経済がグローバル化しているということは、各国内の経済事情が独立しているわけでもなく、需要の変動も世界が大きな一つのトレンドによって動いてしまっている。つまりある国だけが需要が減るのではなく、世界中の需要がいっぺんに減るということが起こりやすい体制になってしまっていることに関する認識が甘かったわけです。
需要を創り出すには、資金が必要です。この資金は現金だけで動いていれば、そう大した量にはなりません。未来の収入を見込んだ資金を現状に足す、すなわち信用を付加して資金を増やすことが必要になります。これが金融における貸し出しに当たると思いますが、金融工学の発達により貨幣発行量の何倍いやもっと多くの資金が動いている状態に今の経済はあります。これは悪いことではなく、これによって経済は継続して成長していく裏付けとなるわけです。但し、余りに過大な信用に基づく資金は、将来の期待収入を余りにも無視した規模となり、ここにひとたび市場が不安を抱けば急速にその資金がしぼんでしまうのでしょう。
つまり、
1)金融工学等の発達とグローバル化により大きな資金が世界中を駆け巡り、全世界的に好景気を演出
2)それがさらなる期待を生み、過大な信用マネーを創出
3)サブプライムローン破綻に端を発した信用不安、金融システム不安が勃発
4)実体よりかなり過大となっていた資金が急速にしぼんでいく
5)それにより世界的に資金不足となり、需要も急速に減少
6)これにより、あらゆる分野での経済活動が支障を来し、各産業が軒並み苦境に陥る
といった流れをたどってしまっています。
そこに加えて日本の場合は、付加価値の高い商品をもって世界の市場で評価を受け、支持されてきていました。自動車しかり電気製品しかり。必要最低限のものではなく、多機能で便利で品質も高いといったものです。
余裕がある時はより良い物に購買意欲も湧きますが、余裕が無くなると必要最低限のものでなるべく節約しようとする行動がより多く見られるようになります。
更にはしばらく日本のみが他国と比較して低金利であったため、長期的な円安傾向にあったのですが、それが今回の経済危機で各国とも金利が下がりそれに伴い各通貨に対して円が独歩高となります。これは輸出する上で大きなマイナスとなる(同じ原価で作っていても、相手先で売る時には原価が自然と上がる)。更に相手国で同じ量が売れたとしても、円建てに直すと低くなってしまう(昨年アメリカで100ドル売り上げたとすると12,000円くらいになるが、今だと9,000円となり、3,000円も目減りしたことになる)ので、より苦境に陥っています。
なので日本の高付加価値路線がより大きな打撃を受け、それによって他産業を引っ張ってきた輸出産業がダメージを受けたことにより、全体的に悪くなっているのだと思います。
つまり
1)世界的な金融システム不安による信用縮小
2)高付加価値路線の行き詰まりと円高による輸出産業のダメージ
が今回の「百年に一度」と言われている景気後退の原因となっていると、私は考えます。これらの解決無くして、景気回復はなかなか難しいのでしょう。1)も2)も20世紀の爆発的な世界経済成長の源だけに、問題は深刻です。
どんな事象に於いても、原因追究→対策の立案→検討→実行→検証→さらなる対策の立案と軌道修正を繰り返していきながら問題解決にあたることが大事です。
世界各国も危機感を持って、様々な対策が為されています。
しかるに最近日本国内で大きく取り上げられている政治のニュースは
・麻生首相の漢字読み間違い
・派遣切りに端を発した正規労働者と非正規労働者の問題
・定額給付金
・かんぽの宿の売却問題
・麻生首相が郵政民営化に賛成だった反対だったか
・中川前財務兼金融担当大臣(これなら素直に大蔵大臣と呼びたくなりますね)の酩酊記者会見事件
といったところで、現在の苦境の原因を追究するわけでもない、対策を検討するわけでもないお話ばかりです。
確かに過去の問題を追及したり、現在苦境に陥ってしまっている人の生活保障も大事でしょうが、経済活動が収縮していけばもっと困る人が増えるわけで、いかにして経済活動を立て直すことこそが急務ではないですか?なぜ内向きの話ばかりをニュースで語るのでしょう?縮小していくパイをどうやって分配するかを話してもしょうがない、どうやってパイを増やすかを考えないのでしょうか?
与党も野党も口では「百年に一度の大不況なので」と言いますが、対策は結局は国のお金を使って直接需要を増やそうとするお話をもって、景気対策と言うばかり。あとは政争に終始しています。
「余裕がまだまだあるんですね、日本は。」と皮肉の一つでも言いたくなります。
今回の中川さんの問題も、中川さん個人の問題として日本では取り上げているきらいがありますが、世界からすれば今の日本全体の経済危機に対する鈍感さの象徴として見ているのではないでしょうか?
「サケ・プロブレム」各国メディア、中川財務相辞任を報道(from MSN産経ニュース)
マスコミから発する国民世論も、政治家も今回の経済危機は需要が一時的に減ったからではなく、世界的な大きな構造的問題と日本の経済成長モデルの問題点から起きている話だと言うことを踏まえて、抜本的な構造改革無くしてこの危機は乗り切れないことを自覚し、それに対する対策を真剣に討議するようにしてもらいたいものです。

「多事争論 -経済とグローバル化と日本の行く末」に14件のコメントがあります

  1. 日本の職業政治家は、失職しないために全ては選挙優先なのだと思います。
    森元首相も先日は朝からのこのこテレビに出演していましたが、中身も無い、自論も無い姿に存在意義の無さを感じました。
    政権は代々問題の先送りが至上命題で、かつての不良債権処理、消費税率を始め、バランスの難しい問題はとりあえず次の政権へ回してしまってきたイメージがあります。
    もう万年与党ではたかをくくってしまっていてこういう局面ではダメな気がします・・・
    選挙が大事なら、せめて自分らの票田が不利益をこうむる事態だけは避ける様に即行動が要ると思うのですが、悠長ですよね。。。
    片や民主党も、政策の結果優先でもなく景気対策のスピード優先でもなく、ともかくこの機に乗じた選挙の実施、政権交代を迫るだけの駄々っ子になっていますよね。
    失業対策の結果をなんとか農林水産業と介護と幼児保育・初等教育に振り向けられないものでしょうか。
    医師不足の解消は泥縄では無理ですが、この辺りの就業人口の不足はこの機に補っていきたいですよね。
    とにかく、ものづくりニッポンの復権を望んで止みません。

  2. 建築、意思、会計、法律、すべてに資格試験があるのに、
    政治家に資格試験がないのは何故?
    自民、民主がすべて世襲議員に席捲され、
    質の悪い政治家が日本を率いている、これが悲劇(喜劇)
    の根本にあるように思います。
    政治家は国民の選挙で選ばれるから、それでいい
    と当の政治家は言うでしょうが・・・
    マックスヴェーバーの「職業と政治」
    冷徹な現状分析力に培われた熱い情熱が必要な政治家
    なのに・・・・
    マスコミの人気投票を煽る報道も問題です。
    オバマが何もやっていない就任時に支持率が
    日本で90%というのは、いったい何でしょう。
    独立さんの分析には全く同感なので、
    この部分については特にコメントしませんが・・・
    ここ数日、地方を駆け足で講演してきました。
    東京では見えないところが見えます。
    新聞は東京の視点で、いたずらに悲観論を強めている
    という自分自身の見方を顧みて反省もします。

  3. 新聞は東京の視点で、いたずらに悲観論を強めている
    気がしてきました。
    地方は地方で結構、生き延びる知恵をもっている。
    地方に希望はない。その責任は国にあるという
    自分自身の見方を顧みて反省もします。
    何度もすみません。後半部分、上記に修正します。

  4. げんきさん
    コメントありがとうございます。
    おっしゃるように、日本の職業政治家は、失業しない、すなわち落選しないことを余りにも第一に考えすぎていますよね。確かに「猿は木から落ちても猿だけど、政治家は選挙で落ちたらただの人」って格言もありますが、それにしても国を見ずして政争に走る姿は、とてもがっかりとした気分にさせてくれますよね。
    農林水産業と介護と幼児保育・初等教育への就業者の確保をこの期にというのは、大賛成です!どうしても国にとっての必要性と就職の人気度というのは比例はしませんから、こういった機会を活かしていくのは、とても意義あることだと思います。
    そうやった広い視点を持って欲しいですよね。

  5. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    「冷徹な現状分析力に培われた熱い情熱が政治家には必要」との言葉は、まさに金言だと思います。
    今の政治家にももちろんあるのでしょう。但し、政治抗争をする上でとのことですが。
    また上記の言葉は有権者にも通じると思います。政治家として何かを為した時にきちんと評価する、つまり選挙での投票行動とするといった形に出来ない限り、なかなか民主主義は機能しない気がします。
    今日時間があれば、今週号の日経ビジネスに掲載されていた「強い政府の落とし穴」という特集を拙ブログにてご紹介しようと思っていました。
    残念ながら夜中になってしまっており、今後にしますが、とにかくこの機会を逃さないとばかりに官僚の権限強化ばかりが最近目に付きます。もう少しみんな冷静になって、状況を見て欲しいと思いますね。

  6. 分類上、野球にいれるべきかも知れません。
    ただし、野球における多事争論ということで・・・
    野球小僧に興味深いレポートが出ていました。
    上田監督は相場先輩などの野球理論を頑固に受け入れなかったが、昨年のセンバツ初戦敗退のあと、自分のアメリカ
    野球が間違っていたかも知れない・・・
    と感じ、スモール・ベースボールにチェンジした、というのです。
    私は逆だと思っていました。大学が右打、ゴロヒットを狙っているように思えなかったから。
    上田監督が先輩の言うことを素直に聞かないように、
    高校生も上田さんに物申すのだという。
    こうして先輩だから、後輩だから、ということで
    自説を曲げず、どこまでも議論して自分が納得してから
    チェンジする。
    因みに白村君が最も頑固で、信条は「独立自尊」
    それだけに自分を見つめ直し、自分で納得した白村君は
    強い。

  7. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    野球小僧、自分も読みました!せっかくですので明日以降に多事争論野球編ということで独立した記事にしてみますね。

  8. ドラフト09年(ベースボールマガジン)
    の大学生の部は、トップが中林君。
    今、146キロ出るそうです。
    高校の部は、西条の秋山君。
    明徳戦で150メートルのホームラン。
    最速150キロ。
    明徳の監督が絶賛!
    秋山君はプロ志望ながら大学も視野にいれている
    とのこと。
    今年、中京から伊藤君の後輩、竹内投手が
    入ったように、もしかしたら・・・
    梶本君を慕って、秋山君が・・・・・
    白村、秋山が揃って入ったら・・・
    (揃ってプロに行ってしまったらガッカリ)

  9. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    いつも素晴らしい情報をありがとうございます。中京の竹内投手が入ったのですね!今年こそ奥橋くん(文武両道さんにご指摘受けました。ありがとうございます!)の活躍に期待したいです。
    中林君自身もプロ志望のようですね。そのためには、コントロールとメンタルをよりいっそう磨かないといけないですね。彼は責任感がとても強いが故に、大事なところであっけらかんとした投球が出来ないところがあるように思いますが、今年こそはその壁を突き抜けて欲しいですね!

  10. 奥橋君ですよね?
    米遠征メンバーに入っていませんから、
    まだ肩が治っていないのかもしれません。
    岡山県でプロに行った投手からホームランを
    打った打撃を活かすかも?
    それにしても中林君に次ぐ2人目が出てこないと
    いつものことですが、加藤君の時と同じ
    エースに負担がかかってしまいます。

  11. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    塾高野球部は中林くんが夏の県大会決勝戦で力尽きるかのように打たれてからは、必ずエース級を2枚作ろうとしているように見えます。
    もちろん塾野球部もそれを指向しているのだと思いますが、なかなか・・・。でも個人的には2年前、3年前は相澤くんがいたので、ちゃんと使えば2枚看板になるのにと思っていました。
    今年は今の段階ではまだ見えてこないですね。でも、どの選手にも良い点というのは必ず持っています。学生野球なので、指導者がそういった部分を温かい目と厳しい姿勢で伸ばしていってあげてほしいですね。
    期待のニューフェースを神宮で見ることができることを楽しみに、春のリーグ戦を見に行こうと思っています。

  12. 白村の帽子のひさしの裏側には「オレが世代最強」の文字。“白村世代”と呼ばれるために、全国の舞台で実力を証明する。(スポーツ報知)
    慶応に入学が決まった竹内君が、センバツに出場する後輩を指導している。(甲子園の星)
    センバツ、大学の開幕、待ち遠しいです。

  13. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    春の訪れと共に、学生野球も始まりますね。「世代最強」と言ってしまう若さの勢い、大学に入学するまでは後輩を教え続ける頼もしさ、共に楽しみな感じです。

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