ちょっとした記事のご紹介 -ガンと闘い力尽きた打撃投手の葬儀に横浜ベイスターズ一軍全選手がユニフォームで参列した

@niftyのポータルサイトに、とてもしんみりするお話が載っていたので、ご紹介します。

横浜スタジアムの片隅で
ガンと闘い力尽きた打撃投手の葬儀に横浜ベイスターズ一軍全選手がユニフォームで参列した
=増田晶文
(SAPIO 2009年7月22日号掲載) 2009年7月30日(木)配信
文=増田晶文(作家)
 打者に打たせる球を投げる。空振りに仕留めることは求められない。プロ野球のバッティング投手の仕事とは、いわば打者の練習台だ。現役を退いた投手が務めることが多いこの希有な職業は、普段は脚光を浴びることはまずない。自分の仕事が終わった後は、ひたすらチームの勝利を現役の選手たちに託すのみだ。
 石田文樹もバッティング投手の一人だった。横浜ベイスターズで約13年間、黙々とチームメイトに球を放り続けた彼は、昨年ガンに倒れ、若くして帰らぬ人となった。
 84年の夏の甲子園を制した優勝投手と言えば、野球ファンなら彼のことを覚えているだろう。野球に取り憑かれた高校球児は、その後どんな辛酸をなめ、苦節をしのぎ、短い一生を終えたのか。父親としての生き様は、彼の子供たちに何を伝えたのか。これは球場の片隅に雄々しく生きた一人の野球人の物語である。
「寿美江――」
 夫の声は思いがけなく、はっきりとしていた。石田寿美江には、それが病室に響くほど大きく聞こえた。
 激痛をもみ消すモルヒネの副作用か、それとも廃疾が意識をも喰い荒らしはじめたからか。このところ夫は朦朧と覚醒を繰り返している。
「紙とペンをもってきてくれ」
 夫の、もうボールはおろか筆記具さえ握る力のなくなってしまった右手が震えるように動く。
「スコアブックをオレの代わりにつけてほしいんだ」
 まだ野球のことを――寿美江は哀しみに切なさが重なって、どんな顔をしていいのかわからなくなった。おさな児をあやすように、彼女は言った。
「スコアブックのことが心配なんだね。でも、ベンチにはつけてる人がいるから大丈夫よ」
 返事が届いたのか、夫は眼を閉じた。安らかとはいえぬ彼の呼吸の間をぬって、エアコンの低い空調音が聞こえる。
続きを読む : 直腸を蝕んだガンは骨髄にも…

このお話を読んで何とも言えない気分になりました。
・あのKKコンビのPL学園を決勝で抑えた取手二高の優勝投手
・直後は早稲田大学に進学
・練習が合わず中退後、再度野球を始め大洋に入団
・その後、打撃投手となり、98年のベイスターズ日本一に貢献
・息子さんが加藤投手、丸山君の母校である川和高校で3年生のエースだった
なんだか、いろいろな事象に絡み合いながら、この方の一生を読んでいくと、言葉になりません。
佐賀の有名な書物である葉隠には「武士道は死ぬ事と見つけたり」という有名な言葉があります。
これは先の大戦の日本軍のように万歳突撃-玉砕という意味では無いと思います。
明日は無いかも知れない我が命を思い、日々を悔いや思い残しがないように、一生懸命生きていく。そうすればいざというときも動じないはずということを言っているのだと思います。
この記事を読んでいて、なんだかこの文句を思い出していました。

「ちょっとした記事のご紹介 -ガンと闘い力尽きた打撃投手の葬儀に横浜ベイスターズ一軍全選手がユニフォームで参列した」に6件のコメントがあります

  1. 山本常朝自身、殉死しなかったし、
    「我人、生くる事が好きなり(私も人である。生きる事が好きである)」と後述している様に、
    葉隠は死を美化したり自決を推奨していない。
    西田哲学と葉隠「やまとだましい」は、
    特攻や玉砕に使われたと観る。
    葉隠の中には嫌な上司からの酒の誘いを丁寧に断る方法や、部下の失敗を上手くフォローする方法、あくびをしないようにする方法等、現代のビジネス書や礼法マニュアルに近い内容の記述が殆ど。
    新渡戸稲造の「武士道」とともに
    「いかに誠実に生きるか」のみを問うた本。

  2. あれからもう一年ですか。あのKKコンビの3年間、唯一夏に黒星をつけたのがあのチームでしたからね。しかも公立で木内さんが最後の取手二での指揮。その後、彼も色々あったから。。。でも本当に若すぎる死でしたね。  追記・本日でたナンバー。なかなかの内容です。ぜひお買い求めを[E:book]

  3. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    余りにも端的で印象深い言葉は、その本の趣旨を逆に伝えにくくすることがありますね。
    それこそ「学問のすすめ」は、内容は学問を学ぶか学ばないかで格差が生まれるので頑張れといった本なのに、平等を説いた本と思われていますし。
    葉隠で調べたらこんなページが見つかりましたので、良かったらご覧下さい。議論というのはやはり難しいですね。こちらにお越しの皆様との違いに愕然とします。
    http://www.geocities.co.jp/WallStreet-Bull/1388/ronso/52hagakure.htm

  4. あごらさん
    コメントありがとうございます。
    仰る通り、なんとか1ヶ月毎日投稿を達成することが出来ました!突撃のテーマで祝ってみました[E:happy01]

  5. 黄色と黒は勇気のしるし♪さん
    コメントありがとうございます。
    本当に若すぎる死でしたね・・・。栄光を味わった後の挫折。栄光に背を向けないとやっていられない現実。もう一度自分と向き合って掴んだ幸せ。唐突にやってくる不幸。なんだか、本当に胸がいっぱいになるお話でした。
    ナンバー、いいですね!自分も買いました[E:happy01]

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