興味深い記事のご紹介1

リスクが全く未知だったということは少ないものですね。実生活でもよくあります。ああ、こう思っていたのにな・・・と。リスクを想起したとき、その頻度とその大きさを考え、頻発するモノ、ないしは被害が甚大なものに対しては、スピード感を持って対処しないといけないものですね。

特報:福島第一原発、津波を「再評価中」だった(From ケンプラッツ

 津波による浸水で電源を断たれ原子炉を冷却できなくなった福島第一原子力発電所。2006年に改定された耐震設計審査指針(新耐震指針)に基づいて、津波に対する安全性を再評価している最中だったことが日経コンストラクションの調べで分かった。
 東京電力は1966年の福島第一原発の設置許可申請時、60年のチリ地震津波での水位変動を考慮して、津波の高さを想定した。福島県小名浜地方の年平均潮位より3.1m高い水位だ。なお、引き波時の下降水位はマイナス1.9mと想定した。
 その後、土木学会が2002年に「原子力発電所の津波評価技術」をまとめたのを受けて、東電は津波に対する安全性評価を見直した。マグニチュード8.0 の地震による津波を想定し、津波の最大高さは5.7m、引き波時の下降水位はマイナス3.0mとした。東電によればこの時、原子炉の冷却に必要な取水ポンプの設置方法を見直すなどの対策を講じている。
 06年9月、政府の原子力安全委員会は新耐震指針を制定し、経済産業省原子力安全・保安院が各原発事業者に耐震安全性の再評価を指示した。なお、81年の耐震指針制定後、初めての本格的な改定だ。
 新耐震指針のポイントは、重要な構造物や設備の耐震性を評価する際の入力地震動をより精緻に、より厳格に設定することだ。設定した入力地震動に対する構造物や設備の応答を計算して、耐震性を評価する。
 さらに、津波や周辺斜面の崩壊についても考慮するよう求めている。ただし、津波に関しては「施設の供用期間中に極めてまれではあるが発生する可能性があると想定することが適切な津波によっても、施設の安全機能が重大な影響を受けるおそれがないこと」という一文のみ。しかも定性的な表現にとどまっている。
耐震性の評価を終え津波はこれから
 新耐震指針に基づく再評価は、(1)基準地震動の設定と原子炉建屋など重要施設の評価(中間評価)、(2)周辺斜面や津波の評価と基礎地盤の評価、屋外重要土木構造物の評価(最終評価)という2段階で実施する。
■原子力発電所の耐震安全性評価の概要
Fig15
 東電は福島第一原発に関して、まず5号機の中間評価を08年3月に保安院に報告し、09年7月に保安院から「妥当である」という内容の審査結果を受けている。3号機と4号機についても同様に、中間評価までは審査を終えている。
 最終評価に向けて、津波に対する再評価を検討している最中に東日本大震災が発生した。震災が発生しなくても、東電は最新の海底や海岸の地形データや、潮位のデータを使って計算をやり直し、津波の高さなどの想定を見直す可能性があった。
 結果論から言えば、津波に対する再評価が間に合っていたとしても、高さ14mと推定される今回の大津波を防げなかったかもしれない。政府の地震調査委員会が「想定外」と言う四つ以上の震源域が連動して動く巨大地震を想定するはずがないからだ。
 土木学会の原子力土木委員会津波評価部会は07年に発表した「津波評価手法の高精度化研究」で、津波水位の確率論的な評価方法や高精度の数値モデルなどを示した。東電は既に最終評価を終えた柏崎刈羽原発で、「現時点でプラクティスとして確立しておりません」として採用しなかった。
 地震動以上に不確定要素が多くて想定が難しい津波だから、最新の研究成果を積極的に取り入れ、より安全側に想定することが求められる。
渋谷 和久[日経コンストラクション]

「興味深い記事のご紹介1」に3件のコメントがあります

  1.  原発の設計で津波が大変気になったのが浜岡でした。東海、東南海、南海が同時に起る場合も想定出来たからです。但し、今の防潮堤が充分と言う訳でなく
    補強が必要でしょう。
     仙台沖でM=9は予想外でした。耐震指針の見直しは、絶えず行われていましたが、成果として改訂された指針が発表されるのは、10年に一度程度でした。
     改訂されると、現存の原子炉が其れをクリア出来るか否かの検討が各炉で行われますが、大変な作業です。そしてクリア出来なければ、炉は止められます。
     電力側が大改正に消極的なのは、当然です。設計には、確率が考慮されて、確率が極めて極めて低いが若し起きれば大きい,そして被害も大きいものは、以前は対象外になりました。今は、発生確率と発生した場合の被害額との積をリスクとし、リスク値で検討するようになりました。人命は被害額の中でどう評価するのかは社会情勢で変わります。
     確かに津波の指針は充分とはいえませんが、津波の研究は比較的近年に急速に発展しました。高速大容量コンピュウターが出来た御蔭です。遅きに失しましたが、次の指針には明記されることは間違いありません。
     日本は地質学上では、何回も海中に没しています。しかし、巨大隕石でも地球に衝突しない限り、当面は沈没する事はありません。
     福島第一が非常事態の事は,認識して居り、一喜一憂していますが、一応収拾すると見ています。

  2. 日本およびその周辺でM=8.75(実際は、有効数字が3桁あるのでは無く8+3/4と言う有効数字で2桁以下の話しですが)以上の大きな地震は起らないと言う地震学の常識を、何の疑いも無く信じた耐震工学関係者は、大いに反省すべきです。なんの根拠があって最大値が定められたのか(例えば地殻の歪みエネルギ蓄積能力等)の説明を地震学に問うべきでした。事実、心の底には地震学が途方も無い大きな値を出して来て技術的あるいは経済的に構造物の設計が不可能になる事への心配もあり、M=8.75を諾々と受け入れてきたのでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください