日本と中国・韓国・そしてロシア その3


ロシアについては深く触れませんでしたが、日ソ国交回復の際にダレスの恫喝として知られる言葉、「二島返還で折り合うのならば、沖縄をアメリカの領土とし、日本に返還しない」でわかるように、日本との関係は常にアメリカとの関係の反映でした。アメリカは日本の地域大国化を防ぎ、またロシア・中国の膨張も防ぐため、わざと領土紛争の種を撒いてあるという説もありますが、あながちウソでも無いような気がします。そんなこともあり、しっかりとアメリカ陣営に残った日本は冷戦下において、大きな軍事的貢献を果たします。それは津軽海峡と宗谷海峡の警戒の充実です。ここをソ連軍の船に自由に航行させないことによって、どこからでもアメリカにプレッシャーをかけるという体制をソ連はなかなか取れなかった。極東方面における冷戦の勝利に、実は日本も貢献していたのです。ちなみにそこを核弾頭を搭載した原子力潜水艦が突破して、太平洋を自由に遊弋したとします。そうすると航続距離はいくらでもあり、ソナーでの探知も困難、更には大海原に消えてしまったところから、ソ連が核攻撃を出来ると言うことはアメリカにとって耐えられないことです。イニシアチブが相手に移るからです。原子力潜水艦が戦略兵器と呼ばれる所以です。そんなロシアとの関係もソ連崩壊後、何度か接近したことがあります。それは橋本内閣時と森内閣時です。これがなぜ着地できなかったかをわかるには、まだ時間が経っていない気がしますので、推測だらけになってしまいそうです。ただ実質的な関係を志向するプーチンの言動と、国内での体制を固めプーチン後の絶対的な権力を狙うメドベージェフの行動を見ると、何かのヒントになるかも知れません。
ロシアが中国・韓国と違うのは、国際的な名分で見た時、2国と比べて正当性が低い。しかしいくら条約違反等があったにせよ軍事的には日本を圧倒した事実もあるし、そうしたのはロシア(とアメリカ)だけ。考えて見ると韓国と正反対の立ち位置ですね。
そんな中、3国とはそれぞれ領土問題を抱えています。
中国とは尖閣諸島。現在の実効支配は日本だが、外交関係を考慮して現在島の利用は一切していない状況。中国の領土と主張はしているものの、今のところちょっかいを出しているのは民間人(ということにしている)。
韓国とは竹島問題。現在の実効支配は韓国で、韓国にとってみればここは韓国のプライドの源。死んでも守るべき場所と考えていることでしょう。国際関係的には火事場泥棒のように支配し、排除したと日本からは見えても。
ロシアとは北方領土問題。日本を軍事的に圧倒した上で占領した地域を、ずっと実効支配している。今は経済的に困窮しているわけでもなく、積極的に日本との関係を改善する必要が無いと言えば無い。そんな中、愛国のイメージを作り、且つその行動の結果大きな対立を呼ぶ心配も無いので、メドベージェフのデモンストレーションとして活用されている状況。
もちろん我々には我々が考える正当性があり、また他国からすれば他国なりの正当性はあるわけです。
そういった時、領土問題を解決する手段は何か?
それはいいか悪いかは別にして、軍事力の行使、すなわち戦争になるわけです。
軍事とは他国の無法者を取り締まることではなく(それは警察力であり、治安行動)、自国の領土と安全を守るために使う実力部隊であり、あるいは自国の国益の拡大のために使われる実力部隊です。
大抵の戦争は領土問題から起こります。
ここで今回のそれぞれの問題で強く主張している方々に聞きたい。領土問題は突き詰めれば戦争につながるが、今現在の日本の体制で戦争に勝てる状況にあると思っているのかと。
その1の冒頭で述べた「負け戦とはかくも悲惨なもの。物的・人的損害は想像を絶するものがあり、かつ政体に正義感が持ち込まれる現代においては、国民の根底意識そのものを変えてしまうことが十分にある。」は、まさにここに係るのです。本意であるかどうかは問題ではありません。いざ戦争になった時に、負けないような状況に、今の我が国はあるのか?ということです。
今の自衛隊はそもそも先制攻撃を許されておらず、且つ年齢構成もいびつな状況になっていて、いわゆる兵隊さんレベルの年齢層が極端に少なくなっています。これは防衛費削減に伴い、人員削減をリストラでは無く新規募集の絞り込みで行ったため、やたら高齢化が進んでしまったからです。一時期防衛費のGNP比1%枠を超えるかどうかが政治問題にもなっていましたが、結局1%を超えたのはバブル時の3年だけで、後は1%以内。それも時には0.9%をも切るかというような数字になっているのです。
更には竹島にせよ、尖閣諸島にせよ、島嶼地域です。であれば、強襲揚陸艦(兵隊をむりやりその島に上陸させる船)であったり、大規模な空挺部隊であったり、制空権を握るための空母であったり、補給路の確保として必要な潜水艦であったりが必要となります。また独自の情報網も必要です。日本の今の状況はどんなだと思いますか?揚陸艦、持っていますか?
こういった防衛力の整備に目を向けず、ただ強気なことばかり言っても(例えそれが論理的に正しく、主張すべきことだったとしても)意味が無い。太平洋戦争だって別に戦争狂が起こしたのでは無く、日本なりの理念もあったわけです。単純に言えば、負けただけです。ちょっと悪く言えば、身の程知らずに世界中を相手にしてしまった。ということです。でもその時ですら背景となる軍事力はあり、曲がりなりにも4年近く戦える力を保有していた。今の日本にそれがあるのでしょうか?
もし日本が今、周辺諸国から侮られているように感じるのであれば、それはアメリカとの同盟関係の劣化云々もあるかもしれませんが、日本の防衛力そのものに対しての評価と言っていいと思います。
更に中国やソ連が日本に対して恐れていた潜在的な脅威。それは「いつでもその気になれば核兵器をすぐ製造できる」ということ。余り日本を刺激して、そちらの方向に向かってしまっては厄介だと感じていたことは、各国の為政者が発言しています。その懸念の源は日本国内に多数あった原子力発電所なわけです。そこで核兵器に使うプルトニウムをたくさん製造しているのですから。
ところが311以降の脱原発の流れは、周辺諸国にとっては日本の核武装の脅威を著しく下げることにつながり、そうでなくても現在起きている防衛力の劣化、そして世界的にも珍しい国民に国を守る義務が課せられていない国の体制が相まって、今の日本と領土問題を起こしても恐怖を感じることが少ないことがこの状況を引き起こしているのです。つまり、今戦争しても勝つ目算が日本に無いことを見越されていると思うのです。
どうせやるなら勝つ勝負をしなければいけません。そうするために日本がどうすべきかを考えず、ただ強気なことを言ったり、徒に両国民の対立を煽るようなことを言ったりするのは、極論を言えば亡国の徒と言いたくなるのは、これが故です。
なので、まず共通的な対応としては、国としての防衛力・軍事力の充実を図るべきです。どんなきれいごとを言おうと、軍事力の裏付けが無いところで、独自の主張をすることはできません。自国の領土をしっかりと守りたいと言うのであれば、自衛隊→軍への変換は必要なことであることを認識し、また実行すべきです。
その上で原発そのものがリスクにもなっているが、核武装をしないが相手に核武装の脅威を与える意味を理解し、原子力の技術の火を消さない努力をすべきであり、現在の国際環境がこうなっているのだから、それを場合によっては国民に説くことも避けるべきでは無いと思います。さすがに今の段階で核武装に突き進むのは他国との同盟関係や核非拡散体制から言っても難しいと思います。
それを踏まえ、後は各問題によって状況に応じた対処方法が分かれます。
尖閣諸島ー民間による利用実績を淡々と積み上げることが必要です。いわゆる実効支配の実績作りです。特に今の世の中、民間人に犠牲者が出ると大きな非難を浴びます。危険を冒して部隊が上陸する必要もない場所なので淡々と民間人が利用すればいいのです。例えば学術調査とか、灯台の整備とか。中国がなぜ民間団体をこちらに寄こしているのかを考えれば、わかることだと思います。今回の石原さんのように、実効支配の実績を作る前に、相手国民の感情を逆撫でするだけの行動は、下の下の策だと考えます。その上で防衛力の整備に一定の目処が立ったなら、軍事基地化することも検討して良い一つの項目です。この島を含む第一列島線を守ると言うことはアメリカの国益にも繋がるので、アメリカとの同盟関係も発揮しやすいことも意識すべきです。相手が戦略的に仕掛けてきているので、こちらも戦略的に対抗すべきです。
ただ実質的な被害に基づく反日感情はすごく強いので、変に民衆を刺激することは避けるべきです。制御が効かない流れになりかねないので。コントロール出来る状況の中で、戦略ゲームをお互いにやることが肝要です。
竹島ー残念ながらこちらの解決を図るのは難しいでしょう。竹島を韓国のプライドの源として規定してしまっていて且つ実効支配済み。相手が主張を抑え、日本に平和的に譲るなどは天地がひっくり返ってもあり得ないと思います。あそこを日本が実効支配するためには大規模な戦争、すなわち韓国そのものを屈服させるような行動に出ない限り難しい。それをアメリカが支援するとも思えないし、他国はより一層そうでしょう。残念ながらこちらは放置をするか、何かの取引材料にでも使うしか無いと思います。とは言え、彼らに言わせればもともと固有の領土な訳ですから取引材料にすらならない。なのでここは大局的な観点に立つしか無いと思います。
ちょっと話しはずれますが、今回の竹島騒動に始まる日韓の確執。これをただ韓国の愛国的行動から来たとみると本質を見誤ると思います。6月には軍事情報協定を結ぼうとしたにも関わらず、2ヶ月後にこれ。私には第三国の謀略の匂いがしてなりません。日韓の間に問題を起こすのは簡単。歴史問題と竹島問題をくすぐればいいだけですから。いわゆる天皇謝罪発言が行われたのは、「忠清北道の大学で行われた教員らとの会合の席上」ということも、もっと注目して良い点だと思います。そしてその直後に出てきた北朝鮮と日本の接触、更には中国政府の今回の問題の抑制した態度を見れば、どんな謀略がなされているかわかりそうなものだと勝手に思っています。
なので相手の感情に対して変な対応をすると、余計に問題をややこしくするし、こう言ってはなんですが、何を言ってもムダだと思います。何はともあれ、ほっとくしか無いと思うのです。それよりも日本としての本質的な対策を講じていくことこそがやがて色々な問題の解決に繋がるのだと思います。
北方領土ー現実的に解決したいのなら2島返還にあとどんな条件を付けるかでしょう。ただアメリカは今でも反対しそうです。ここでもまた日本の大局観が問われます。
ただどんな選択肢があるにせよ、両国民の間で悪感情を煽りあうのは最悪です。憎悪からろくなものが生まれるわけがありません。感情は予期せぬ衝突を起こします。そしてそれが戦争に繋がってしまうのは本当に最悪です。国と国との戦略ゲームの中で何かがなされるのならまだしも、感情的な対立の果てというのは、いやしくも言論人なら是が非でも避けるべきことの筈です。そうなってしまったら両者とも敗者と言えましょう。
なので「冷静な対応」を強く強く求めているのです。「冷静な対応」とは好きだけぶたれていろというものではありません。冷静に状況を分析し、感情的な対立を避け、かつより自国を有利な立場にするために今何をすべきかを考えることだと思います。
それは残念ながらスワップの枠の縮小だったり、国債の購入中止だったり、韓流スターの入国禁止ではありません。それはただ単に感情の対立を煽るだけで、そのくせ実質的に日本の立場を有利にするものでも何でもありません。
この状況が嫌だったら他国に侮られない、しっかりとした軍事力を持つべきですし、当然に国民に国を守る義務を課すべきなのです。それを裏付けにして外交交渉をするしかないと思います。それが受け入れられないというのであれば、次善の策として、アメリカの庇護を頼る。それも嫌なら、周囲で発生するこれらの状況を受け入れるしかないと思うのです。
だから自分は何度も、この問題は自分の国のあり方をどうしようと思っているかの問題だと言っているのです。
長々としたシリーズになってしまい、失礼いたしました。


“日本と中国・韓国・そしてロシア その3” への3件のフィードバック

  1. 次の勉強会の資料にさせていただきます。
    原子力、軍事専門家も来るので・・・

  2. 福澤先生が天上でニヤリとされているかも?拍手あるのみです。「オリンピックの金メダリスト松本薫選手を十人ほど連れて行って睨みを効かせる」という珍説を一笑に臥すことなど到底できませんね。

  3. まさか台湾企業に日本の大企業が救済されるとは?
    韓国と台湾企業に敗北した日本企業。
    経済の地位低下が政治状況にも影響されているのかもしれません。
    内輪の政権、地位争いに明け暮れる政治家たちへ!
    島を買うのも税金です。
    経済が落ち込めば変えませんよ。

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