雑誌記事のご紹介 〜RETHINKING JAPAN from NEWSWEEK その1

最初の書き出しがいつも同じですが(汗)、寄る年波と年度末の繁忙にかまけて、なかなか拙ブログが更新出来ていません。どうも申し訳ございません。
これから書く記事も元はたまたま髪を切っている時にたまたま台の上に置いてあった雑誌で(とは言え、多分美容院さんも自分の好みを知っているのでわざと置いたのでしょうが)、思わず膝を打った記事を見つけ、すでに最新号では無かったので中古で取り寄せたのが2週間ほど前・・・。なので、もう1ヶ月以上前の雑誌です。

少々掟破りかも知れませんが、2回に分けてご紹介します。私はこの記事と次にご紹介する記事は、第三者的観点から、今の状況を的確に描写した記事だと思いました。ご覧いただいた皆様はいかがお考えでしょうか?

日本が世界から誤解される理由
ジェニファー・リンド(ダートマス大学准教授)
 学者や政治アナリスト、ジャーナリストたちはどういうわけか、日本を「普通の国」として扱うのが苦手なようだ。日本が何をしても、彼らは極端な色眼鏡を介してその意味を曲解してしまう。
 日本経済が急成長を遂げた1970〜80年代には、日本が築き上げた奇跡的な資本主義体制はいずれアメリカを追い抜き、世界に君臨するだろうと持ち上げられた。バブルがはじけて日本経済が下り坂に転じると、今度は正反対の日本衰退論が主流に。少子高齢化の進行によって日本は数百年以内に絶滅の危機に瀕する、という絶望的な未来がまことしやかに語られている。
 外交政策でも、極端な論調が幅を利かせている。
 第二次世界大戦後、日本は日米同盟の下で節度ある国家安全保障政策を追求しつつ、高度な軍事力を保有して対ソ連封じ込め政策をサポートしてきた。しかし多くのアナリストや国際関係の専門家は、日本の「控えめ」な態度ばかりに注目して、脅威的な軍事力の存在を無視。戦後の日本は、軍事体勢と決別した非武装の平和国家だとアピールしてきた。
 ところがここに来て、振り子は正反対に振り切れている。尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有問題をめぐる中国との関係悪化を、日本の平和主義の終焉とナショナリズム台頭の兆しと見なす主張が声高に叫ばれているのだ。
日本政界「右傾化」の嘘
 昨年9月に中国全土で吹き荒れた反日デモでは、日本企業への襲撃が相次ぎ、「日本を打倒せよ」と訴えるプラカードが通りを埋め尽くした。それでも、当時の野田佳彦首相は落ち着いた態度を崩すことなく、中国政府に暴動の取り締まりを冷静に求め続けた。
 なのに世界の主要メディアはこの数ヶ月間、ナショナリズムの大波が日本を襲っていると警告し、日本政界でタカ派が台頭していると書き立てている。
 皮肉な話しだ。日本政界の「タカ派」の指導者たちは、他国の基準で見れば究極の穏健派といえるだろう。何しろ彼らは、カナダに匹敵するほど温和な全体戦略を描き、中国の物騒な反日デモに対して平和と国際法の遵守を呼び掛けるような人々なのだから。
 実際の日本は決して平和国家ではない。だがその一方で、攻撃的な軍国主義国家でもない。ゴジラのように手に負えない経済大国でもないし、超高齢国家でもない。日本は普通の「ミドルパワー」国家だ。
 アメリカ(とおそらくは中国も)も別にすれば、日本ほど巧みに国力と影響力のブロックを積み上げてきた国はほかにないだろう。
 何世紀も前から、各国の国力はGDPと1人当たりのGDP、人口規模、技術力、政治的安定の指標で測られてきた。さらに現代社会では、民主主義の有無も項目の1つに含まれるべきかもしれない。
 この6つの指標について、日本を明らかに上回るのはアメリカだけだ。経済力と人口規模の組み合わせにおいて、日本に匹敵する国はヨーロッパには存在しない。代表的なミドルパワー国家であるイギリスは、人口もGDPも日本の半分ほど。ヨーロッパ経済を牽引するドイツも、人口、GDP共に日本の3分の2だ。
 複数の指標で日本を追い越しつつある中国でさえ、経済のファンダメンタルズに重大な問題を抱えている。巨大な労働人口を擁するおかげでGDPは膨張しているものの、国民の大半は貧しく、政府は汚職まみれ。政治的な安定を阻む課題が山積している。
 もちろん、日本にも問題はある。高齢化が進行し、労働人口が縮小する現状では、たとえ堅調な成長を実現出来たとしてもGDPは当分の間、横ばいが続く可能性が高い(それでも世界3位だが)。
 安定した民主主義を誇る一方、13年間で9つの政権が生まれては消えてきたのも事実だ。さらに近隣諸国との長年の歴史問題が、日本を世界に売り込む「ソフトパワー」外交の足を引っ張っている面もある。
 それでもなお、日本が全体として驚異的な国力を備えているのは間違いない。豊かで民主的で今日行く水準が高く、テクノロジーを使いこなせる巨大な人口を抱え、おまけに強力な軍事力も保有しているのだから。
 ゴジラのような強力な経済か、傷ついた無力な経済か。従順な平和主義国家か、過激な軍国主義か。日本がそんなふうに極端に描写されるのはなぜか。
 まず「予測」に付き物の問題がある。評論家はしばしばGDPや防衛費といった指標をいくつか選び出し、現在の政治や経済情勢に何の変化もないと仮定して、20年、30年、または50年後を予測する。
 しかしそのように直線的で、変化や柔軟性を伴わない予測はこれまで当たったためしがない。かつて専門家達は、アメリカが凋落し、ロシア経済や日本経済が世界を席巻すると予想した。今日では、中国の台頭を誇張して論じているように見える(それが正しいかどうかも、時間がたてば分かるだろう)。
現実のずれが疑念を生む
 特に予測が難しいのは、安全保障の分野だ。安全が危機にさらされ不安が増大しているとき、人は思い込みや自分に都合のいいことしか見ようとしない「確証バイアス」によって、最悪の事態を想定しがちだ。
 このような予測をめぐる一般的な問題以外にも、日本の国力を分かりにくくしているものがある。政府自身の振る舞いだ。
 日本の政府関係者や学者、安全保障の専門家はしばしば「日本に軍隊はない」と口にする。しかし憲法9条に「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」とあるにもかかわらず、日本は陸軍はもちろん、東アジア最強の海軍と空軍を有している。
 言葉と現実のずれは近隣国の人々の心に疑念を生む。なぜ日本政府は言葉を濁し、分かり切ったことを否定するのかと、彼らはいぶかる。日本政府が軍事力に関して率直に語っていないと考える隣人たちは、日本が軍国主義になることはないと言っても信じない。そんな疑念に満ちた環境で日本の力が少しでも増せば、過剰なほどの注目と恐怖心を引き起こす。
 核兵器をめぐる議論も同じような混乱を生んでいる。多くの日本人は、核兵器を邪悪なものとして非難する。指導者たちは毎年8月6日や9日に行う演説の中で、核兵器のない世界を目指すと誓う。
「日本カード」で人気取り
 その一方で、日本は40トン以上のプルトニウムを保有している。核兵器を持たない国としてはどこよりも多い。日本はいつか核兵器を手にする必要が出てくるだろうし、それが憲法9条に反することはないー過去にこんな発言をした政府高官や政治家も1人や2人ではない。
 だから誰にも分からない。日本は核兵器廃絶を目指す世界的取り組みの柱であるのか、それとも次の核保有国になるのか。
 最後にもう1つ、日本が極端な目で見られる理由がある。近隣諸国に、日本の政策を意図的に歪曲する人々がいることである。
 中国や北朝鮮の指導層は自分たち独裁政権の正当性を訴えるために、日本による占領と戦争の記憶を持ち出し続ける。民主国家の韓国でさえ、政治指導者たちは国民の人気取りや、自分たちの望む防衛政策への支持を得るために「日本カード」を使うことがある。
 こうしたことから、東アジアの指導者たちは日本の防衛政策におけるわずかな変化も、意図的に誇張してみせるのだ。
 日本を極端視する傾向に、さまざまな理由があるのは確かだ。しかしそうした見方は間違っているだけではない。東アジアの勢力バランスの中で日本が担うことの出来る役割を、同盟国が見逃すことにもつながる。つまり、日本の存在価値を過小評価することになる。
 日本を平和主義の国と考えることで、人々は日本が東アジアで担うことのできる役割を見過ごしてしまう。一方で、日本を軍国主義の国として見れば、真のパートナーとして信頼出来なくなる。
 過去60年間、日本は能力に見合う仕事をしてこなかった。安全保障をアメリカに頼るだけでなく、安全保障政策を日米同盟の枠内に押し込め、従属的なパートナーとしての役割に甘んじてきた。(管理人注:これは日本の怠惰な姿勢だけではなく、パールハーバー世代のアメリカ側も日本が自律的な安全保障政策を採ることを容認しないことがアメリカの国益だと考えていたからだと思います。)
 日米同盟においては、日本は最小限の役割を演じればいいとアメリカも同意している(つまりアメリカが軍事力を用意し、日本は基地を用意するということだ)。
 しかし今や、同盟関係や国際政治において日本が本当の能力に見合う、もっと普通の役割を担う時が来たのではないか。日米政府は考えるべきだ。

「雑誌記事のご紹介 〜RETHINKING JAPAN from NEWSWEEK その1」に2件のコメントがあります

  1. 管理人さんのテーマ提示はいつもドキドキさせますが、
    東大理系の塾生が多い私の勉強会では
    今年の麻布中学の入試問題で、「どらえもん」を用いた問題が出されて話題となりました。下記のサイトをご参照ください。
    http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20130319-00000001-pfamily-soci
    最近はこのように一つの答えではなく、生徒の本質に迫ろうという問題が出ているというのは、非常におもしろい傾向と思われます。
    また、最近の就職試験では、以下のような問題が出されところもあるそうです(各設問解答時間25分)。
    「10歳の親戚の健太君が家に来ていました。『俺分数なんてわかんないよ。俺はサッカー選手になるんだ。学校の勉強なんてぜんぜん役に立たないよ』と言っています。あなたならはどう話しますか?」
    「健太君が、『おじさん(お姉さん)就職するんでしょ。就職って社会の歯車になることでしょう?と言っています。あなたならどう話しますか?』
    問題はシナリオライターが作っているそうです。正解はないが、解答から本人の本質、芯になっているもの、今後の課題が見えてくるそうです。通常の面接だと、かしこまって、自分を飾り、ベテランの試験官でも本質が見抜けないが、このような相手が斜め下の相手だと、つい本質が出てきてしまい、また25分で書かなければならないと自分を飾っている時間がない。
    この分析結果から各企業は必要な人材を選ぶそうです。

  2. 文武両道さん
    今更ながらですが、コメントありがとうございます。
    この設問にどのように答えるかは大変興味深いですね。確かにこの設問からは、その人の人生観、仕事観が伝わってきそうです。今読んで、それなりに自分の考えが言えそうなので、ちょっとホッとしました(^^ゞ

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