歴史論争の針を進めるべきでは?

中国が改革開放による経済成長を遂げるに従って、東アジアのパワーバランスがどんどん変化し、そして今となっては世界第二位の第三位の経済大国が狭い海域の中で対立するようなきわどい状況となってきています。
そして、そういった状況の中で安倍首相は地球儀を俯瞰する外交を標榜しながら、中国包囲網を敷こうとしていますが、これは相手あってのこと。余程戦略的な思考の元進めていかなければならず、もしひとたび外交の舵取りを誤ってしまえば、中国の巧妙な外交キャンペーンによって、逆に「対日包囲網」を張られかねません。中国に脅威を感じている東アジア諸国と共に対中包囲網を張っていると思っていても、ふと周りを眺めると日本が取り囲まれていたという事態も起こり得ます。実際、戦前の日本は「防共」の旗印のもと世界各国と結びつこうと国際連盟脱退後、必死に外交活動を繰り広げますが、結果はご存知の通り、孤立化と止むに止まれずの日独伊防共協定→軍事協定(これは外交サイドからであって、特定層はもちろん積極的)となりました。
今の場合、取り囲む手段として中国が使うのは「利」と「理」です。「利」とは経済力を背景にした援助と膨大な自国市場の提供で、相手国が日本より中国の方に重要性を感じるようにさせ、また実際にその国の経済の肝を握ること。「理」とは歴史問題で、日本軍国主義の被害者であり、第二次世界大戦の戦勝国の仲間であり、といった理屈の部分です。
「利」については、それこそ日本が努力と知恵と勤勉とで経済力を高めていくしかありません。
ただ「理」のいわゆる歴史認識問題については、そもそも戦う場所が違うのでは?と思うのです。
つまり1930−40年代のフィールドで歴史認識問題を論じる限り、我が国の立場は大変苦しいということです。色々な理由があり、単純に日本が悪かったとかではないのはよくわかっているつもりですが、いみじくも中国が言っているように、日本は敗戦国のため、どれだけ正しかろうと、どれだけ証拠を集めて説明しようとも、国際世論の大多数を占めるようになるのは極めて困難です。今の体制が戦勝国によって作られたものである(つまりUnited Nations、日本では国連ですが連合国も同じ表記です)ので、その正当性を否定するないしは揺らがせるような話しが受け入れられるはずもなく、せいぜい世界統一政府樹立の時か、日本が世界的な大戦争の中で戦勝国にでもなるしかないと思います。(もっとも、中華人民共和国政府がよく言う戦勝国の時の国家指導者は蒋介石であり、カイロ宣言の時も蒋介石。その蒋介石を武力で打ち負かしたのが共産党なので、戦勝国づらを彼らがするのは本来おかしいのですが)
それより、時計の針はより現代に近い1950年代以降に進めて、歴史論争をすべきです。大体、1930年代の政府と憲法の両方がそのまま連綿として続いているのは今では主要国ではアメリカ、イギリスくらいではないでしょうか?ソ連→ロシア、中華民国→中華人民共和国、日本ー憲法の変更、ナチスドイツ→西ドイツ+東ドイツ→統一ドイツ、イタリアーファシスト党の崩壊といった具合です。現在安倍首相が「歴史家に判断を委ねるべき」というのもいいのですが、今の形と連続性の無いもので論争するのでは無く、今現在も続いている政体で行われた問題こそ、責任ある形で問えるというものです。
1950年代から日本は海外領で銃弾を一発たりとも放っていないのに対して、中国は内戦が終わった後も戦争をし続けます。朝鮮戦争への参戦、ソ連・インドとの国境紛争、中越戦争など多くの武力行使を行っています。どちらが軍国主義でしょうか?
戦後の日本は武力を背景に相手に要求を突きつけたことも一回もありませんが、中国は何度したことでしょうか?
大躍進、文化大革命といった具合で自国の民を塗炭の苦しみに陥れた国と、民生部門を中心に驚異の経済発展を遂げた国。
世界2位の経済大国ですが国連分担金が世界第6位で常任理事国と、世界第3位の経済で世界第2位の負担金で常任理事国で無い国。
一党独裁の国と、政権交代も経験している複数政党のある民主体制の国。
日本はもっと戦後の歩みに自信を持つべきであり、そのことをアピールするべきです。戦後の日本の歩みは中華人民共和国と比較して明らかに平和的です。そのことをもっとアピールし、そこでの論戦に中国を引き込むべきだと強く思います。なぜ自らの強いフィールドで戦わず、難しい局面の戦いを守勢で戦うのか不思議でなりません。今こそゲームチェンジを!
今は残念ながら日本と中国は外交戦の真っ只中です。どのような外交官をどのように配置し、その上でどういったフィールドを設定して戦っていくのかをもっともっと戦略的に考えていくべきなのだと思います。
みなさんはどうお考えですか?

「歴史論争の針を進めるべきでは?」に5件のコメントがあります

  1. 首相の靖国参拝に対して中国が強烈に宣伝を行っている現在の状況は
    率直に言って戦略なき対応です。
    官房長官の必死の引き留めを振り切って靖国参拝したことが
    ヤフーの世論調査で85%の指示を受けたことに首相は舞い上がっているらしい。
    自分のフェイスブックに1日8万件の支持レターが来ることに自信を深めているらしい。
    しかし与党公明党は宗教政党である。千鳥が渕への参拝を強く首相に進言し突っぱねられたことが、
    沖縄選挙での自主投票に踏み切らせたらしい。
    沖縄県知事の決断は与党としての公明党の支持なしでは
    ありえなかった。それが靖国参拝で吹っ飛んだ。
    今回の沖縄選挙では創価学会の自主投票、実質的には現職支持が自民党敗北の結果を産んだ。
    政治、外交ではなく経済だけに安倍カラーを発揮してほしい。この点では官房長官と公明党首脳は
    一致している。

  2. 今我々日本人は歴史的転換点に立っているような気がします。日本を取り戻すには手順と段取りが全てとも思いますが、最後は決断でしょうね。ともあれ、今年もよろしくお願いします。

  3. TBSがNHK会長の記者会見を放映したが、記者の質問に最初はノーコメントではいけませんか、と答えたくないと意志を示したのに、記者はしつこく迫った、そこで個人として会長はコメントした。ところが記者はコメント後、会長としてのコメントと受け取ると脅した。
    これは問題を起こそうとする記者のずるい意図によって仕組まれた。もっともそれを読めない会長であれば報道機関のトップの資格はない。
    騒動の種はマスコミジャーナリズムの商業主義が撒きまくっている。

  4. 東條英機は「靖国神社に戦死者だけでなく、従来は合祀の対象外だった空襲や原爆で亡くなった戦災者や終戦時の自決者をも合祀すべきだ」と終戦で直ちに陸軍省に指示した。
    しかし合祀(ごうし)可否の決定権は靖国神社にあることになっているとして靖国神社が反対。特にその東條を含むA級戦犯の合祀が総理大臣の参拝を牽制(けんせい)、制約し、外国要人の儀礼的参拝を妨げ、外交関係にまでひびを入らせているとしたら、宗教法人の自由だと看過するわけにはいかなくなってくる。合祀基準について国民や諸外国の人々にもわかってもらえるような説明をすべきである。その時が来ていると思う軍人・軍属の英霊を祀る靖国神社はあっても、空襲で、原爆で、内地で、外地で亡くなった民間人すべてを含めた戦没者の御霊は祀る施設はない。国立追悼施設としての千鳥ヶ淵戦没者墓苑建設に遺族会と靖国神社は反対し「完成しても外国の元首らを招待せず」など条件をつける。A級戦犯合祀に沈黙を続ける靖国神社の方針は皮肉にも「先の戦争で亡くなった人はすべて戦没者であり、軍人・軍属と民間人を区別すべきではない」という東條の意志に反する。
    遺族会は自民党最強の支持団体。本気で反対すれば首相の首も飛ぶ。にわかに自民党総裁に復帰した安倍
    靖国参拝で首相になった小泉を思い出させる。

  5. 私が主宰する勉強会の生徒のひとり(女性経営者)があるブログに紹介してくれました。
    「利害関係のないメンバーが毎月集う勉強会は、数十年続いています。 全員が東大、早稲田、慶應出身と関係者で、留学や海外赴任、官・学・民を歴任されるなど日本を代表するエリート達です。国際事情をはじめ、政治や経済、専門分野まで幅広く話題は事欠きません。おそらく、伝手がない限りお招きできないであろう著名な先生が生徒なのですから、どんなにか恵まれた会に違いありません。博識な彼らは、常に興味が尽きないのです。」
    昨日の勉強会では管理人さんの当ブログ記事が話題になりました。
    慶應出身とは私は法学部ですが、
    ほかは医学部大学病院関係者なので
    気になる竹内監督のことを聞きたかったのですが守秘義務があるでしょうから遠慮。

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