トランプ氏の当選を通じて考えること

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(Photo by Chip Somodevilla/Getty Images)

メディアの予想もなんのその、トランプ氏が次期アメリカ大統領となりました。

実は米大統領選挙の日は夕飯を近所のかっぱ寿司で食べました。その時、隣接するテーブルにいたお母さん、(多分)中学生、(多分)小学生の家族たちの会話は殆どアメリカ大統領選挙についてでした。

なかなか意識が高いじゃ無いかと思い、どんな内容かなと思っていたら「もうアメリカもお終いだ」「世界中の国と戦争を始めるぞ。そうなれば大変だ。」とのこと。

次の日、NHKのあさいちを見ていたら、「不安で夜も眠れなかった」といった視聴者の投稿が。

おい、さすがにイメージに踊らされすぎないか?

少なくとも、どこかと戦争をして、領土を広げてやるみたいな野心は過激な発言の中にも無かったはず。

言っているのは

1)イスラム教徒の入国禁止
2)中南米からの不法移民を入国させないために壁を作る。費用はメキシコに払わせる。
3)ISをロシアが攻撃したいというなら、好きにさせてやればいいじゃないか。やっつけてもらえればアメリカも助かる。
4)ロシア機が最近よく接近してくるが、撃ち落とさないと舐められっぱなし。
5)日本や韓国やサウジアラビアはアメリカに守って貰うために十分な対価を払っていないから、払わせる。払わないなら撤退も考える。
6)日本や韓国が自国を守るために必要だって言うのなら、核兵器の保有も認めていいじゃないか。
7)日本や中国は為替操作でうまくやっていて、アメリカをやっつけている。
8)関税を大幅に上げて、その税金で社会保障を行う。
9)TPPは即日離脱。オバマケアも無くす。

くらいでしょうか。

この項目について何らか関わっている部分について心配しているのならまだしも、わけのわからないチンピラみたいな人が大統領になったから世も終わりだと慌てるのは、ベルリが来て神州を外国人が穢してしまうと大慌てした幕末と変わらないのではないでしょうか?

その後のテレビの解説も、アメリカの分断、不満の噴出といった切り口ばかり。もっと素を見て判断することが大事なのでは?と思うのです。

大体、言っていることはアメリカという国に確実にある一つの潮流です。

1)、2)あたりは排日移民法を思い出させます。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%8E%92%E6%97%A5%E7%A7%BB%E6%B0%91%E6%B3%95

3)は冷戦時に中東でよくアメリカがとっていた他国に他国を攻撃させる戦略。

5)は撤退は交渉事の言葉であり、「駐留費負担の増額」が目的でしょう。ここから日米同盟破棄には繋がらないと思います。これも1980年代くらいかやよく言われている日本安保ただ乗り論です。(https://kotobank.jp/word/%E5%AE%89%E4%BF%9D%E3%82%BF%E3%83%80%E4%B9%97%E3%82%8A%E8%AB%96-159143

6)は5)の流れで出てきたお話ですが、これが契機となってまさか現職の副大統領のこんな発言を引き出すとは思いもよりませんでした。(核武装を禁止した日本国憲法を我々が書いたことを、彼は理解してないのではないか。彼は学校で習わなかったのか。http://www.huffingtonpost.jp/2016/08/15/biden-japan_n_11538084.html

7)も1980年代後半から唱えられてきました。(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%82%BA%E6%9B%BF%E6%93%8D%E4%BD%9C%E5%9B%BD

4)、8)、9)あたりは選挙になると多かれ少なかれどの国の選挙でも言われることです。(愛国心の喚起と、社会保障の充実とその財源)

確かに本人のキャラクターもありますが、ここまでのマスコミからの嫌われ方、アメリカ国内での大規模なデモ(選挙の結果でこれほどのことは見たことが無い)を見ると、一体何なんだろうと思います。

何回も書きますが、誇張はあるにせよ、彼が選挙で述べていたことは、どれもある意味のアメリカらしい話です。変に分断とか憎しみの連鎖みたいな話でこの話を見るべきでは無いように感じます。

・移民が開拓して作った国。しかし開拓すればそこに既得権が生じる。既得権が生じれば、よそ者を排除したくなる。でも流入人口が多いからこそ、経済もダイナミックに発展する。

・自由貿易をした方が、優秀な頭脳が集まり生産力も豊富にある米国にとって有利に働き、無限の市場が広がる。しかし、技術が一般化していくと人件費が上がっていない他の国に国際競争力で負けることも増える。しかし頭脳は相変わらず一流なので、いいとこ取り、すなわち海外に生産拠点を移す流れとなると、中間層が打撃を受ける。

・世界のスーパーパワーであることが、情報を掴み、自国にとって有利な制度を維持する源となる。また平和・安定が続くことは、そのまま現在のスパーパワーである米国の安泰を意味する。しかし、そこには経費がたくさんかかるし、同じ地位を求めて挑戦してくる国も当然に出てくる。

・全ての国民の社会保障の充実を図ると巨大な財源が必要になる。それはどこかの部門の縮小か、増税しか無い。では、どこ?

といった問題点にどう対応するかを、米国民も苦悩し、そしてトランプ氏に投票したのでしょう。どうやってこの問題を解決していくのかを見ることこそが、これからの流れを理解する上で一番重要だと考えます。エキセントリックな人物評ではなく。
そして日本としても、その問題認識を共有しつつ、どのようにお互い解決していこうとするのか?が問われるのだと思います。「トランプは何も知らない」「トランプはおだてれば、いいように操れる」とか、マンガみたいなことは言わない方が良いと思います。

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