何をもって「戦前のいつか来た道みたい」と言うのか?


どうやら明日には衆議院の解散が決まりそうな今日この頃。

始まる前からレッテル貼り合戦の様相を呈してきているように感じます。

つい1ヶ月前には「森友・加計学園問題で国民に信を問うために解散しろ!」と言っていた人たちが、掌返したように「このタイミングでの解散は民主主義を否定する暴挙だ!国民不在!憲法違反!」と言います。間接民主制を敷いている我が国としては選挙以上の国民の意思の表示の方法は無いはずなのに。

またついこの間、「今度の臨時国会ではまだ明らかな説明がなされていない森友・加計学園問題を徹底的に追求する」と言っていた人たちが、「北朝鮮の脅威が増す中、選挙で政治空白を作るのはおかしい!」と言っています。ということは彼等の頭の中の国政の優先順位は 森友・加計学園問題>国会での通常審議>民意を問う ということになるのではないでしょうか?

そして、表題に掲げた、昔からよく言われている「今の流れは、戦前の繰り返し、いつか来た道みたいだ」と「ヒトラー、ナチス」になぞらえるのがいつも繰り返されます。

ざっと言うと国家権力の増大が謀られ、戦前の日本への回帰を目指す今の政権は、きっと恐ろしい場所へ我々を連れて行くだろうみたいな。

そう言っている人に聞きたいのですが、今のどういった部分が、戦前のどんな出来事とかぶると言っているのでしょうか?

では、明治期の日清・日露戦争はOK?大正期の第一次世界大戦での掃海艇派遣と、成金景気はOK?同じく大正期のシベリア出兵はOK?

どの時期の出来事も、その時々固有の問題が大きく関係しています。

太平洋戦争あたりのことで言えば、

1)第一次世界大戦で欧州列強各国が疲弊し、体制の転換を余儀なくされたドイツ・ロシアのような国家と、傷痕が深く残ったイギリス・フランスのような国家と、余り深く参加しなかったことにより経済的発展を迎えたアメリカ・日本のような国家に分かれた。

2)そこに関わったアメリカが結果的に多くの経済的利益を得て、1920年代は空前の好景気と、未成熟な近代資本市場が膨張していく。

3)資本の蓄積の少なかった日本は1920年代の後半に金融危機(台湾銀行の破綻、鈴木商店の破産など)が生じ、アメリカは株式市場の暴落から1930年代初頭に大恐慌を引き起こす。

4)その結果、先進国各国が経済不振に陥り、若年層の失業者が急増する。

5)この失業問題をどう解決しようとしたかが、その後の第二次世界大戦に向かう各国の姿勢と密接に関係する。ブロック経済化、海外への進出、独裁によるスピード感ある政治運営などです。

といった経済面や、

1)第一次世界大戦での総力戦体制に衝撃を受けた陸海軍の若手将校たちが、それまでの薩長藩閥の強い軍隊の人事構成への反発と相俟って、国家も軍隊も新体制を作ろうと考える。

2)大恐慌が発生し、農村の疲弊や人身売買もどきの話が出てきたことで、農村出身の兵が多い部隊では義侠心からか、体制変革の気運が高まる。

3) 1)と2)の機運が重なり、テロやクーデターもどきが複数勃発。しかも、国民もそれに反発するどころか、苦しい生活への不満から寧ろ拍手喝采をも受ける。

4)ソ連での共産主義革命もあり、その結果、旧指導層たちがテロや内乱を怖れ、軍部主導型の政治に流れていく。

5)体制変革の担い手たちは総力戦体制を志向していたので、思想統制や言論統制によって国民の戦意を高め、総力戦に備えようとする(今だと北朝鮮がまさにそれをやっていますね)。

といった政治面での動きや、

1)日露戦争では完全な勝利を得ることが出来ず、多くの将兵の命を奪い、国費を使ったのに、得たのは南樺太と南満州鉄道と関東州(今の遼寧省あたり)の租借権、朝鮮での日本の優越くらいに留まる。

2)そのため、満州鉄道と関東州の保持は、何人も侵せない、国としての絶対的命題となる。(でないと、遺族から何のための犠牲だ!とかなんであんなに国費を遣ったのか!と言われてしまう)

3)日露戦争当時の中国は清だったが、その後の辛亥革命から、中国の中で国民意識が高まり、国土回復を目指し日本と衝突が頻発するようになる。

といった歴史的、外交的立場があり、それらから

A)大恐慌、失業問題、そして人口増加問題への解決として中国大陸を指向したこともあり、ますます中国から離れられなくなった日本は、中国人の国民意識の高揚による衝突から戦争へとのめりこんでいく。

B)局地戦では勝利を収めるものの決定的打撃を与えられぬまま長期化していく。それに伴い増えていく人的な犠牲、経済的な負担。

C)それを解決しようとすればするほど、列強との利害衝突が深くなり、新たな敵が増えてくる。そこに思想統制で使っていた「悠久の大義」「統帥権干犯」といった言葉が政策決定の手足を縛る。遺族の増加もまた引くに引けない情勢を生み出す。

D)中国で手詰まり感が深まった頃、ドイツが軍事的膨張を行い、やがてオーストリア併合、ズデーテン地方併合を行う。この頃各国と防共の旗印で同盟を結ぼうとしていたがなかなかまとまらない日本はドイツに急接近する。しかしこの時は防共のはずのドイツがソ連と不可侵条約を結ぶことで断念。

E)ドイツはその後ポーランド侵攻をソ連と共謀して行ったことで第二次世界大戦勃発。航空機と機械化部隊を活用した電撃戦によりヨーロッパを席巻。

F)この欧州新情勢を見た日本が軍部だけではなくマスコミも含めて「バスに乗り遅れるな(ドイツと後から同盟結ぼうとしても相手にされない)」となり、日独伊三国同盟が締結される。

G)この結果戦争の相手国たるイギリス、そしてその大いなる支援国であったアメリカを決定的に敵に回す。

といった流れから戦争突入となります。

今の日本、今の安倍政権は上記のどの辺りに似ていると言っているのでしょうか?私には似ている部分が見当たりません。

それより「解散の大義」=「悠久の大義」、「忖度(あまり使うことの無い漢字だけの言葉)」=「干犯」、「陛下は今の政権のやり方に反対だと思っているに違いない」といった風に、攻め立てている人たちの方こそ、戦前のマスコミが煽り立てた手法に通じる物を感じてしまうのです。大衆はこうやって動かすんだと。

それぞれにそれぞれの立場はあると思いますが、印象だけで相手を攻撃するのでは無く、事実をもって論じ合い、今の状況下でどうすれば国民の幸福と安全が保たれるか、具体的な政策を提示し、堂々と議論を巡らせるべきだと思います。今回の選挙がそうであることを祈っております。


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