平成23年度全日本大学野球選手権 決勝戦 対東洋大戦 観戦記その2

9回表、無死2塁、ランナー代走の川島君、バッター山﨑錬君と、格好の場面を作り出した塾野球部。
6)藤岡君の凄み
しかし、ここから藤岡君の凄みを見せつけられることになります。
既に直球は140km/h超えがやっとというくらいのボール。こうなれば普通は変化球主体でかわす配球を指向すると思います。直球が棒球になるからです。でも藤岡君は違いました。140km/hの直球であっても、スピンの効いたフォーシームを投げ込むのです。
ここに興味深いデータが。30個のアウトのうち、内野ゴロが2個。しかも両方とも投手ゴロ。抜けた!と思ったら藤岡君がしっかり捕っているのです。あと犠打が3つですからそれを省くと、25/27=92.6%がフライアウトか三振だったわけです。ストレートは思ったよりもホップし、落ちる球は思ったより落ちる。すなわち藤岡君は腕の振りもさることながら、スナップの利かせ方が抜群に上手く、いずれかの方向へのスピンが常に効いた球を投げ込んでいたということだと思います。
スタンドから自分は錬君に「とにかくサードにランナーを進めよう!」と声を掛けました。錬君も実際にそうしていたと思います。アウトの前の打球、敢えてこねて打ち、12塁間へゴロを放とうというもの。しかし、ファウル。そして勝負球を打ち上げてしまい、キャッチャーファウルフライ。続く阿加多君、神田君と連続三振で無得点に押さえ込まれます。
でも自分は考えてしまいます。スタンドからかけた「3塁に進めよう」という声が正しかったのかどうか。錬君はその前の2打席共に外野への大飛球を放っていました。これであれば無理に12塁間に打とうとするのではなく、敢えて逆方向に打つような軽いスイングを意識して貰った方が良かったのでは?と。そこがちょっと後悔です。(ここら辺から妄想が大きくなってくるので、適当に読み流して下さい[E:coldsweats01])
7)福谷君の熱投と周囲の冷静
福谷君は序盤の危ない場面を切り抜けた辺りから、いつもの福谷君に戻りました。9回までの投球、見事だったと思います。でも今だから言えるのかも知れませんが、8回くらいから変化球がちょっとすっぽ抜ける感じになってきていました。彼は心で投げるタイプ。まさか自分から疲れたなぞ言うわけもありません。大助君もいたことだし、10回は左打者が続くし、回の頭から竹内大君に代えるべきでは?と思っていました。ちょっとそんな気持ちもあって撮った写真です。
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まあ、それはさておき、10回裏、2ストライクまで追い込んだ後、ライト前ヒットを打たれます。ここにもう一つ興味深いデータがあります。ファーストの守備範囲への打球が37打者中、7つもあるのです。そのうち左打者が6つ。またサードへの守備範囲の打球は2つですが、両方とも右打者。すなわち東洋大は福谷君の速球に狙いを決め、速球に負けない振りをしてきていたのです。これはいわゆる力勝負であり、すなわち球威が勝っていたから抑えていたと言えると思います。
そういった背景もあり、次打者の小田君は速球に狙いを定めて打席に入ります。ベースから一歩引いて、内角の速球狙い。
しかし、芸が細かいことに、代走を出し、あたかもバント、ないしはヒットエンドランを狙うかのような形。
こちらもこういった時に怖いのは必要以上に警戒してカウントを悪くしてから、やりたいことをやられてしまうというもの。
思わずこう言ってしまいます。「初球からストライク!」
そして運命の139球目、福谷君の投じた速球は見事ジャストミートされ、ライトスタンドに吸い込まれていきました・・・。
あの時、「普通に打とう!」とか「ボールに逆らうな!」と言えたら。
あの時、「ゆっくり、ゆっくり!」と言えたら。
素晴らしい試合を見せて貰えたのですが、なんだか悔いが残る試合となりました。
でも、だからこそ野球って面白いんですよね。
あともう一つ。
藤岡君が足を痛めたと明らかにわかった後、塾野球部はセーフティバントやそのそぶりなどで揺さぶることをせず、正々堂々と戦いに行きました。それが甘いと言われるかも知れません。でも、大学生野球の最高峰の場面で、正々堂々と横綱に挑んだ塾野球部を自分は誇りに思います。
ああ、結局書き上げてしまいました[E:sweat01]
おまけ
試合後に伊藤君、この試合を観戦していた長﨑君たちにグランドから挨拶したところ、大きく手でばってんを作られ、何度も駄目出しされていました・・・。キャッチャーはこれくらいの人を食ったような部分が必要なんでしょうね[E:wink]

「平成23年度全日本大学野球選手権 決勝戦 対東洋大戦 観戦記その2」に37件のコメントがあります

  1. 川島君を出した時、ここで決めないと負ける。
    山崎君のヒットだけが勝利への道でしたから。
    サードに進めたとしても得点にはならなかった?
    それくらいこの試合では伊場君と山崎君しか
    藤岡君を打てる打者はいなかった。
    明治神宮大会では東海の菅野君、東洋の藤岡君を
    打たなければ日本一はありません。
    昨年の目標は早稲田3本柱を倒してのリーグ制覇
    今年はドラフト3本柱を倒しての日本一。

  2. アマ野球に詳しい方とのお話でいつも話題になるのが、東都の素晴らしい投手たち。
    必ずしも高校時代甲子園で抜群の成績をあげた投手ではないが、4年間でドラフト1位に育て上げられる。
    高校時代の実績からいえば、六大学の早稲田、明治、法政のほうが遥かに上。
    藤岡も甲子園に出ているが1回戦負け。
    そういえば澤村も甲子園どころかチームでエースでは
    まかった。
    東洋OBは藤岡が卒業したら慶應の天下ですよ
    と言って慰めてくれたが、
    東洋のこと、また無名1年生を育ててくる。

  3. 東浜、島袋といったビッグネームが東都に入っているが、4年でプロ入り出来る環境ということでの
    選択だろう。
    古葉さんのところには、
    来年以降、全国から有望球児が殺到するだろう。

  4. 江藤監督
    「チームとしていろいろ課題が見つかった」
    私が見つけた課題は・・・
    右打者の層の薄さ。
    六大学には昨年から左の好投手は小室君のみ。
    だから左主体でも勝てるが、
    全国大会では藤岡君のように左好投手が多い。
    決勝戦でも山崎君を除けば左打者は沈黙
    右は金田君、伊場君、鈴木君も打った。
    伊藤君、高橋君のように左投手から
    レフトへライナーで長打を打てるように。
    すべてライトへひっぱりのライナーでは、
    外角一辺倒の攻めをされるとお手上げ。
    プロに進むには左投手を苦にしないことが必要。
    リーグ戦では継投が失敗しても後半逆転出来たが、
    全国では1点が勝負となる。
    白村、山形君が福谷君レベルの投手に成長すること。
    山形君はもっと長いイニング使ってほしい。

  5. 残念な結果でした。でも決勝戦に相応しい素晴らしい試合でしたね。九回の逸機ですが、私は野球の神様が秋に向けて彼等に与えた試練と思うことにしました。切り札川島君が全く動くことなくチェンジになるなんて一度もなかったのですから。上田監督ではないですが、我々も優勝と準優勝の違いを痛感しました。きっと秋はやってくれるでしょう。

  6. 伊藤君については多くの方が、
    「左投手を打つときにひっぱりにかかると開きが
    早くなる。
     レフトに流すのではなくひっぱたくといい。
     左投手を得意にする打者でなければ
    プロでは通用しない。」
    と指摘されています。
     小室君からは内角球をホームランしましたが、
    左投手は基本的に藤岡君のように外角低め。
     たとえ外角一辺倒でも打てないということ。
     山崎君は巧みに左に引っ張りました。
    阿加多君もそうですがリーグ戦でも2人は
    左中間に2塁打が多かった。
     内角のさばきは、伊藤君から3年生は学びました。
    外角のさばきは3年から学んでほしい。
     気になるのは4年の秋、大森君、高橋君とも
    調子を落としたこと。
     相手からの警戒、周囲の期待からの重圧から
    生じたことと思います。
     いかに春先のようにリラックスして秋に臨めるか
    江藤監督のアドヴァイスにも注目です。
     それにしても伊場君に4打席立たせたい。
    天下の藤岡をビビらせた・・・・
    パリーグでDHでやらせたい。
     中田、伊場の全日本訪米ではホームラン数では上!

  7. あら?恒例のあれだというので我慢していたら。。やっぱりいてもたってもというご気分だったのでしょうか(汗)録画しておいたものをみてコレを読むととてもいいですね。本来でしたら、この日も休みを入れておいたのですが、自分自身もゆっくりと最近あそこのは行ってなかったし、、、その他にもちょっと重要な事が。藤岡君はセンバツの試合もみた人間。昨年までの東都での試合を見ていたので、正直どれだけやれるかなと感じてました。当日誕生日の人は私もよく野球だけではなく、あっちでもチェックします。結構活躍する場合が多いからです。あの藤岡君からこれだけ打つとは伊場くん天晴れです。
     逆に伊藤君は秋が正念場ですね。開会式で桑田さんが言っていた言葉。挫折とはちょっと違うかもしれませんが、ぜひ復活してください。
     17日。ちょうど近くにいるなー。ちと行って見ますかな♪
    蛇足・長崎君のお話笑えました。上から水が落ちてこなくてなによりです。

  8. ちょっとこれだけは返信したくて・・・。
    黄色と黒は勇気のしるし♪さん
    コメントありがとうございます。
    1)横澤さ~ん[E:weep]
    2)荀彧でなく荀攸というところに通を感じます

  9. 藤岡君の高校時代の自分のチームの4番が伊藤君
    驚き!
    黄色さんの検索力凄い!
    去年の準決勝のとき駒大OBの人から
    「駒大は太田さんが代わって弱くなった。
    東洋は高橋さんがずっと監督だから強い。
    高校生だけではなく親も監督で大学を選ぶ」
    と嘆き節・
    今年の準決勝は東洋OBの人から
    「慶應は江藤さんが監督している限り、
    もっと強くなるよ。古葉さんとこも」

  10. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    今後の課題をしっかりと提起できることは大変大事なことだと思います。今回のご提言、前から伊藤君を見ている神戸っこさんにも響いたようですね[E:happy01]
    「外角のさばきは3年生から学んでほしい」ということば、まさにその通りのように感じます。ただ、日米野球ではパワーピッチャーが多そうですから、やっぱり引っ張り系の打撃になりそうですね。
    「戦国東都」と評されますが、その実は東洋大の優勝確率が群を抜いています。それを作り上げた高橋監督はさすがだと思いますし、彼が言った「プロ出身だプロ出身だと騒ぐけど、俺だってアマチュアのプロだ」という言葉に大いなる自負を感じますね。こういった監督が一人でも多くなると嬉しいです。古葉さん(息子さん)も是非いつかは塾野球部を!赤池さんと印出さんも引き連れて。

  11. 相撲では出げいこでは
    自分の苦手な相手を指名するそうです。
    出げいこに行かなくても慶應には竹内君がいます。
    竹内君の外角低めが打てれば、伊藤君も山崎君も
    藤岡君だって打てます。
    福谷君には伊藤君や山崎君を抑えてもらいます。
    捕手陣には川島君を刺してもらいます。
    たぶん現状では竹内君が抑える、
    伊藤君、山崎君は打つ、
    川島君はやすやすと盗塁するでしょう。
    レベルとしては最高の苦手ですよ。

  12. ちょっと複雑・・・
    というのは、ホームランを打たれたのは
    捕手阿加多君。
    中腰で高めに外す球だったみたい。
    伊藤君にはよかったけれど
    当落線上の後輩には苦い1発。
    伊藤君のときは他の捕手というわけには
    いかなかったのでしょうか?
    同じチームでも
    紅白戦で絞り込まれていくんですから
    甘いか?

  13. ただいま到着の朝日夕刊で
    塾高、大学でのエース吉原君
    代表選考の様子を記事にしています。

  14. ■…今回の選考合宿(17-19日)には選手計45人が参加。合宿中に2試合の紅白戦などを行い、最終日の19日に代表メンバー22人が発表される。今年の日米大学野球は米国で開催。7月3-8日の6日間で、計5試合を戦う。代表メンバーは26日に東京都内に集合。27日にNPBイースタン・リーグ混成チームと、28日に東芝と練習試合を行い、30日に渡米して大会に臨む。
    サンスポから

  15. アマに詳しい方から
    上武大が強いと聞いていましたので、
    初戦に負けたので・・・?と感じていたのですが、
    その上武を負かした相手だったので
    警戒して藤岡君先発だったんですね。
    準決勝双方ともエース登板なく
    決勝の慶應にエース温存。
    九州共立が温存したのには驚きました。
    高橋監督が慶應が実力では上、
    と言っていましたが、
    妙な言い方ですが伊藤、竹内の両看板が
    この出来で準優勝というのは
    確かに本来の実力を出せば・・・
    来年は伊藤君は抜けますが谷田君の加入で
    日本選手権の雪辱を期待。
    その前に谷田君は甲子園全国制覇

  16. 久しぶりに塾野球部のブログが更新され、
    川島君の母校岐阜高校への凱旋ぶりが
    微笑ましい。
    大先輩後藤元監督にとっても
    嬉しいことでしょう。

  17. 岐阜高校と言えば、巨人の頭脳であった森捕手。
    後藤さんは三菱重工三原にいたが補強選手として
    金光さんの三菱重工広島で都市対抗出場、
    2人の活躍で中国地方で初の都市対抗制覇。
    後藤さんがアマ全日本監督、
    そして今、金光さんが全日本大学の監督

  18. ―伊藤選手の持つ力の評価は
    バッティング技術はリーグ戦で戦っても、年々良くなっている印象です。法大は伊藤くんが2年生の時までは結構抑えていましたが、3年生になってからは打たれていますね。最終戦の早慶戦もネット裏から見ていましたが、三冠のチャンスがかかっていて、彼の好きなインコース・ストレート系のボールも来ていました。しかし1球も振らずにフォアボールを選んで、1点差の優勝がかかった場面でしたので、彼は1球も振りませんでした。人生に一度きりのチャンスを、こういうことは口では簡単に言えてもなかなかできません。チームの勝利に徹することのできる、見習うべき選手です。全力疾走を常に心がけていますし、そういう意味でも4番は伊藤くんしかいないと。
    スポーツ法政に選考過程が詳しく出ています。
    伊藤君についての金光さんのコメント。

  19. あれから、まもなく1年ですね。春の大学日本一を争っていたのが。。。
    今日、東洋が日大に負けました。もし、明日負けると東洋は東都1部の最下位が決定します。春5連覇中のあの東洋が!!しかも入れ替え戦がありますからね。恐ろしいものです。ちなみに、明日観戦予定です。

  20. 黄色と黒は勇気のしるし♪さん
    コメントありがとうございます。
    そうですね、その相手が國學院大ですよね、確か。優勝してもそこから余り間を置かず入れ替えの憂き目に遭うこともしばしば。戦国東都の激しさを感じますね。もうあれから1年ですね。

  21. その国学院のエースは『宇野くん』。この名前にピーンときませんか?四年前の選抜で…。 二部の春のリーグ戦、最優秀投手になりました。

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