「決断できない日本」を読んで


書こう書こうと思っていながらなかなか書けていない最近読んだ本シリーズ第2弾です。ちなみにその後、「被災地の本当の話をしよう ~陸前高田市長が綴るあの日とこれから~ (ワニブックスPLUS新書) 」と続き、趣旨としてはまさにこの本のタイトルの通り「決断できない日本」という観点から感じるところのあった本たちという流れです。
こちらの本のamazonに掲載されていた紹介です。

「沖縄はゆすりの名人」報道で解任された
国務省元日本部長の爆弾告白
アメリカから見た「日米同盟の真実」
 「沖縄はごまかしとゆすりの名人」と発言したと報道され、国務省日本部長を更迭されたケビン・メア氏。国務省きっての日本通であるメア氏は、本書でまず共同通信記者による歪曲報道の実態に反論します。なぜ、こんな記事が掲載されたのか、そのプロセスを詳細に追跡していくと、ワシントンにいる反基地運動の日本人女性弁護士の存在が浮かびあがります。さらに彼女と「ゆすりの名人」発言を証言したアメリカン大の学生たち、記者との不可解な連携。沖縄基地問題のキーマンであったメア氏が、反基地運動グループの仕掛けた日米間のトラップに嵌まっていくさまが浮き彫りになっていきます。
 実はメア氏は東日本大震災の折り、米軍と自衛隊による「トモダチ」作戦のタスクフォースでロジスティック担当(調整官)を務めていました。原発事故発生直後、東電から「真水を運べないか」といわれたこと、菅政権の事故対応の拙劣さに驚き「駐米大使を呼び出した」ことなど、内部にいたものしかわからない新事実を明かしています。さらに、「トラスト・ミー」と言い放った鳩山政権の迷走ぶり、沖縄の普天間基地はなぜ合意から15年も経って返還できないのか、沖縄に潜む「補助金システム」の弊害、そしてその沖縄を狙っている中国政府の動き、日本の核武装に対するアメリカ政府の姿勢などなど、これほどホンネをぶちまけた外交官の内幕話は他に例がありません。
 「愛した日本でいちばん嫌われた外交官」による爆弾告白。これまで報じられなかった「日米同盟」の真実が見えてくると同時に、問題に対して皆のコンセンサスを重んじるあまり「決断できない日本」の現状を鋭く指摘しています。

内容はまさにここに書いてあるとおりなんですが、とにかく唖然とするような話しの数々が登場します。
是非、日本人(政府とかではなく、我々が持っているもの)がもっている弱点の一端を見る上でもご覧になることをお勧めします。
さらっと冒頭に紹介されていた東日本大震災時の原発事故関連のところをご紹介します。

東日本大震災発生の翌日に東京電力から(日本政府ではありません)在日アメリカ大使館に入った「在日米軍のヘリは真水を大量に運べないか」という問合せがあって、深刻な事態になっていることがわかったのと、東電がまだ原子炉を温存したいという意図があったこと。
福島第一原子力発電所のメルトダウンの状況がわかりかけている時に原子力発電所には50人しかいない。つまり1日二交代制として原子炉一機につき4人で見ているという体制になっていることに対して、政府がどう考えているかわからない
大津波襲来による電源喪失から一週間が経過したその日、日本という大きな国家がなし得ることがヘリ一機による放水に過ぎなかったことに米政府は絶望的な気分さえ味わったのです。
私は正直なところ、菅首相は原発事故の責任を取りたくないばかりに、事故処理をあくまで東電の問題としたフシがあると思っています。だが、東電任せにするのは酷。なぜなら東電は発電事業者であって、巨大過酷事故が起きた場合の事故処理の能力は乏しいからです。
こうなっている理由にいわゆる平和ボケから危機対応能力が衰えているのではとも思う。
放射能に汚染された瓦礫・泥を収容するキャスク(輸送・貯蔵容器)が大量に必要になる。日本政府・東電ともどう調達するかまったく決めていない。アメリカのライセンス生産も選択肢の一つだが、保安院はライセンス移転に3〜4年かかると主張している。
(今のところ戦略的計画は東電のロードマップのみだが)原子力産業に勤務する知人は希望は計画ではないと言って苦笑するばかりだった。
原発事故発生後数日間、日本政府も東電もアメリカの助力は必要ないといった態度だった。実績も多く、技術面でも日本の方が優っている思いがったのかも。妙なプライドが邪魔することも。
ただ当初の日本側の強気の構えはその後一変する。そうすると今度はアメリカへの依存心が急激に強まったかのよう。日本政府からアメリカに米軍の特殊部隊の投入を要請されるという噂も。ただ、特殊部隊の任務は汚染された地域から負傷者を助け出すといった任務。
以前原発へのテロを日米で協議した時、日本の原発警備の手薄さに驚き、銃で武装した警備要員の配置の必要性を指摘したところ、日本政府当局者は「日本の原発に銃で武装した警備員は必要ありません。なぜなら、銃の保持は法律違反になるからです」と答え、唖然とした。
事故発生からまもなく、アメリカから支援リストを日本政府に送った。そうしたら山のような質問事項が来た。例えば無人ヘリがリストに入っていたが、細かな性能等の諸元について、また放射能に汚染された場合の補償のありかたなど。そんな細かいことを聞いて時間を浪費するより前に、まず使用することがあのときは必要だったのでは?
国務省や国防総省の仲間達は「決断しないことが決断になる」と言ってコンセンサスばかり重視して、決断しない日本の指導者達を批判することが少なくない。

といった話しから始まり、沖縄での話し、トモダチ作戦の話しなどが続きます。
本当であれば、通常時には決まりをしっかりと守り、緊急事態には行動することを最優先すべきです。孫子も「兵は拙速を尊ぶ」と言っているとおりです。
但し、我々日本人は緊急事態に直面した時、どうしても個人の責任を追及されることを恐れ、逆に何かの決まり・コンセンサスに頼ろうとしてしまう傾向が強いと思います。これは何も今に限ったことでは無く、太平洋戦争中も、日中戦争(正しい用法かはわかりませんが)中も、日清日露でさえもそういった傾向が見受けられます。
でも、事態が動いている時、そんなことを待っていたりすれば、事態は悪化する一方です。
これまた後で書こうと思っている題材ですが、今のTPP騒ぎは昭和初期の海軍軍縮会議にかぶるように感じています。
決断できない日本はいつまで続くのでしょうか・・・。

「「決断できない日本」を読んで」に1件のコメントがあります

  1. TPPも横断チームをつくるようですが、
    わが省が不利にならないよう決断を避け責任回避の横断チームになるような気がします。

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