ちょっとばかり思っていること

ちょっとばかり最近思っていることを書きたいと思います。とても私的な意見なので余り気になさらずに・・・。
1)野田首相への評価
自分としてはここ近年の総理大臣としては一番高いです。総理大臣としては。何よりもまず、人気取りと思われることをしないで、人の嫌がることの決断を着々としていること。原発再稼働、消費税増税などは、今の政治状況で誰もが言うことに躊躇するくらい、政治家として厳しい内容。でもひるまずぶれずに言っているし、大上段から被せるので無く、しっかりと丁寧に説明しようとしている。これはすごいことだと思います。彼の問題点としては、彼を支えるスタッフの貧弱さ。明らかに不適格と思われる人物を閣僚に登用したり、G20では冒頭だけの出席で、日本にとんぼ返り。あれは党としての要請でしょうが、ここに彼のスタッフの貧弱さと与党になり得ていない(首相を支えることが、政権を運営するということがわかっていないのでは?)民主党を感じます。
2)原発再稼働の論議
自分が一番不思議なのはつい2年ほど前は日本経済再生のキーマンとしてインフラ輸出としての原発がもてはやされていたのに、今となっては危険だ危険だのオンパレードのマスコミというか世論の流れ。一旦交通事故を起こしたので、あんな危険な乗り物には絶対乗るなといった類の論。なぜあの事故は起こったのか、それに対する対策はここまではやるべきだなどの論議が殆ど語られないのは、原子工学とは大変難しすぎて報道や議論してもわからないからか、それとも所詮そういった本質的なことは興味を引かないからと、いろいろな立場の人たち(推進派も廃止派も)が見透かしているからか?
ちなみに自分は対策基準をしっかり定めた上で(この基準が甘い、きついといった論議も聞かないのですが)、稼働させるべきだと考えています。理由として
あ)エネルギー不足が経済活動を低調にすること。今話題の財政再建も活発な経済活動があってのこと。政府による需要創造が大した意味を持たない世界になっていることは90年代からの日本経済を見れば明らかかと。夜中の電気がうんぬんという意見は、本質的に電力需要とは関係ない(その時間は電力不足になっていない)。金儲けがどうのもナンセンス。再稼働を批判するTVも電気が無ければ放送できない。インターネットメディアで高説を説く反原発の方も電気が無ければそもそもインターネットはつながらない。インフラである電力をしっかりしない限り、経済活動(これは人間が生きていく上で必要不可欠)に支障が出てしまう。
い)エネルギー安保の上から必要。天然ガスにはジャパンプレミアムで上乗せ料金、原油価格も乱高下の上南沙諸島、尖閣諸島、ホルムズ海峡がそれぞれきな臭い中、安定的に供給できるかはわからない。確かにウランも輸入だが、一度入れれば大体1年間くらいはもつ。熱量がなかなか失われないのは、原発事故を見ても明らか。すぐに危機に陥るか、それとも1〜2年くらいは持ちこたえられるかは大きな違い。
う)なんにしろ最終的な兵器が核兵器である以上、原子力技術は確保しておくべき。今韓国では、日本の原子力基本法に、「我が国の安全保障に資する」という一文を入れただけで大騒ぎ。核武装するのでは無いかと疑念を抱く。それくらいの価値はあるということ。
え)今の東電叩きは、日本におけるいじめの構図そのものだと思っている。勿論彼らの組織的な問題、改善すべき問題があることはわかる。しかし、問題を見つけては必要以上に呆れてみせて、多数のコメントが発せられる状況は、今の日本に漂う閉塞感へのはけ口としてぶつけているように見える。まさにいじめの際、何かなじる内容を見つけては、執拗に攻撃する姿そのもの。例えば、家庭電気料金のコストの計算で、実際には供給されない東北電力や日本原子力発電からの購買費を計上していたとしてこんな風な言葉で紹介。「東電の呆れる実態。東北電力と日本原子力発電から購入する電力が今後3年間はゼロとなる見込みなのに、年間1,200億円の購入電力費用を私達の電気料金の値上げ原価に入れているそうです。こんなバカな蛮行、暴露&広めて下さい。」でも、新聞記事をよく読むと契約上電力を購入しなくてもメンテナンス費等を支払わないといけないのでこの費用を計上とのこと。契約の妥当性や、再契約について論じるべきであって、「呆れる実態」と書くのは煽っている様にしか見えない。ちなみに新聞記事では1000億と書いていましたが・・・。
3)普天間基地問題、尖閣諸島問題
この問題の究極的な問題は、日本としてどういった防衛政策を持つかが定まっていないことだと思う。前にも書いたが、中国は第一列島線はおろか第二列島線を越えた範囲での活動を目指していることは明確と言っていいと思う。そこに侵略的意図があるかどうかは別だが、中国としての国益を極大化(他国の権益を侵してでも)を目指している。また、中国(朝鮮半島二国も)の中にある所謂歴史的認識は、今や被害者としての立場から、その認識を利用して当時は無かった国力を背景に日本に対して譲歩はあり得ずという強硬姿勢の裏付けとなっている。その中で、日本はどのような防衛戦略を持つかが大事。中国が地政学上どうしても北海道ー本州ー九州ー沖縄諸島の間のどこかを通らないと太平洋に出ることが出来ないということを活かして、海峡防衛、海域防衛に力を注ぎ、中国の軍事的活動が第一列島線を突破できない様にして、日本の経済活動の生命線である中東からのシーレーンの安全を確保すべきだと考えます。
そう考えた時、普天間に米軍基地がどうのと考えるより、どういった形で部隊を配備すれば前述の目的が達成できるかを考えるべき。普天間基地返還を求めるのも結構。今はおもいやり予算の名の下、普天間の基地の借地料はすでに日本政府が肩代わり。であれば寧ろアメリカに対して日本はこのような部隊展開をしてこの第一列島線を守るので、アメリカとどう協業するか話し合う方が余程生産的。アメリカにしてもここで封じ込めておく方が国益に適うので話に乗るのでは。尖閣問題が一昨年に発生した時、クリントン長官が日米安保の対象だと明言した。日本では一種の驚きも生じたが、アメリカの国益を考えれば蟻の一穴となり得る尖閣問題が中国ペースで進むことは避けたいことは明白。こういった面をうまく活かしていくのが外交であり、政治。こういったことを解決するのが政治家の仕事だと思う。
4)消費税増税問題
実際のところ、現在の国の収支バランスは悪い。そうしたら収入を増やすか支出を減らすかどちらかしかない。社会保障はより充実、税金は金持ち以外は増やさない、でどうにかなるわけも無い。ギリシャの選挙結果で緊縮財政派が敗北すると慨嘆するのに、日本でこの議論が起こると収入を増やすか支出を減らすかの話しにならないのではどうして?明確に歳出削減の道筋が立っていない今、増税も止む無しかと思う。通常増税は政権側が賛成、野党側が反対するのが普通だが、今回は自民・公明が賛成。もっともこれは高邁な理想論というよりは、面倒な課題は現在の民主党に片付けて貰ってから政権に返り咲きたいという意図のような気がする。民主党内の増税反対派のよく言う「増税する前にやるべきことがある」に至っては疑問符の連続。民主党政権1年目は間違い無く主流派であった彼らが作った予算は1年目から膨大に増えていた。2年目は途中から菅さんと言いたいところだろうが、であれば1年目は鳩山さん。1年目が膨大だったのは前の政権のせい、2年目がまた膨大だったのは後任者がいけないでは、論理破綻。政権についたら12兆円を削減だとかはいったいどこへ?国民の声を称してガソリン税減税の取り下げを迫った大幹事長は一体誰?同じ消費税増税反対でも、自民党の中川秀直氏らの上げ潮路線の方がまだ理解出来る。マスコミ報道も例えば「社会保障の一体改革を置き去りにして増税だけを」とか言うならまだしも、庶民に打撃が!ってそりゃあ税率を上げれば打撃は来るでしょう。うちの業界にも確実に来ますが、わざわざ教えて貰わなくても計算できます。または国盗り物語よろしく、どっちが勝つだの負けるだの。実際、国をどうすべきかを論じて欲しいのだが、骨太な論議が見えてこないのが寂しい。
5)経済政策
経済活動は、言ってみれば将来への期待を数値化して金額にしたものだと思う。金銭の貸借は、借り主が将来稼ぐであろう金額の期待値を元に生じる。物品の売買にしても、この物品を得ることにより、実際に所有すればこれくらいの満足、価値、利益を自分にもたらすだろういう期待をもとにお金を払う。金融商品に至っては、将来に対する期待そのもの。であれば、いかに将来に対する期待を高めるかが経済政策の要と思える。池田勇人首相の所得倍増計画はそう考えると、素晴らしい政策だったなと感じる。今は期待の先食いをし過ぎて、今や悲観ばかりが先に立ち縮こまっている日本の姿を感じる。セーフティネットですら、本来はここで支えるから将来は羽ばたこうみたいな期待を生じさせるものとすべき。グリーンエネルギーでもハイドロメタンでも自動車産業でも電子立国でもいいので、何をもって将来の期待とすべきかを経済政策担当者は指し示すことが何より大事なのでは。
6)政治不信
今や政治家と言えば自分のことしか考えず、国、特に庶民の事なんてなんにも考えていない人種と思われている様に見える。そう思われても仕方の無い部分があるにせよ、そう言っている人たちは実際どんなことをしているのか?と反問したくもなる。うまくいっていなければ上のせいにして、あいつがぼんくらだからと言うのが一番楽だし、大多数の人とも話題が合う。しかし物事はそういったものではない筈。我々はどれだけのことをして国に貢献しているのか。政治家を選ぶ基準として我々はしっかり政治をして貰えるかどうかを基準に考えて居るか?ただ有名だったり、イメージとしてだけで選んではいないか?国民なりの政治が行われることを考えれば、まず襟を正すべきは、選挙における我々主権者の行動(どういった基準の下で政治家に投票するのか。事前にどのような判断材料をあつめているのかなど)なのではないだろうか。政治家も政治家で多数派の有権者に媚びるだけでなく、信念を持って論じて欲しい。昭和初期の国会内の議論の方が、226事件の後のものさえ、骨太の議論を繰り広げていたと感じる。有権者の選ぶ基準と、政治家の信念がしっかりすれば、また違った形のものが見えてくると思う。
取り敢えず書きなぐってみました(汗)。

「ちょっとばかり思っていること」に9件のコメントがあります

  1. 週刊誌で電気を一番使うテレビをとめろとはマスコミは言わない。
    高校野球も朝から全国一律、夜中も深夜族のため・・・
    自分の利害がからんでいると口をつぐむ・・・
    友人の息子がテレビ局の25時、26時勤務で何度も病院送り・・・
    24時以降まで続くと25時、26時・・・
    自分の利害のみで動く鳩山、小沢、石原が勝つでしょうが・・・
    絶望してはいけませんが・・・
    それにしても秘密の会合が料亭やフランス料理の高級店で未だに行われているのは、
    推定無罪のいい加減を感じます。
    管理人さんの独自な上記の提言に全面的に賛成します。

  2.  今この時期だあらこそたとえば、アダム・スミスの『国富論=諸国民の富』。この本はとても有名ですが、ほとんどの人が読んだことはないでしょう。いま改めて読むと、現代でも通用する経済学の基礎からトピックまでがみんな網羅されています。福沢諭吉の『学問のススメ』も必読ですね。
    池上さんから

  3. 久方ぶりの政治ネタ、心して熟読しました。いつもながらの鋭い感性と的確な分析に改めて感服しました。時代の先導者としての片鱗が随所に感じられ、今永田町で大騒ぎをしている我々の代表者の方々にもできるだけ目を通してもらいたいと思ったほどです。地元から未来への先導を託されている塾員政治家には特に。
    野田政権の評価については少し見解を異にする箇所もありますが、結びの部分などはもう全面的に賛同します。何しろ民主党政権を選択したのは、マスコミがこぞって奏でる笛や太鼓に易々と踊った我々有権者なのですから。茹で蛙現象の自覚に乏しいままに今日と同じ明日が来るものと信じて戦後を生きてきた日本人が、あれだけの天災と人災を経てどう変わることができるでしょうか?まずは次の選挙が試金石になりそうですね。

  4.  今や国民の7割以上が「脱原発」と言われる。だから、メディアは「再稼働が必要だ」とは国民が怖くて言えないのだ。朝日新聞や毎日新聞、東京新聞は「原発反対」「再稼働反対」の立場である。そう主張するのが無難であり、どこからも批判は来ない。
     むしろ困惑しているのは日本経済新聞ではないか。日経新聞はものごとを現実的に報道する新聞なので、原発再稼働の必要性はよくわかっているはずだ。しかし「再稼働が必要だ」と正面から主張すれば、おそらく批判が強くなる。だから困惑しているのではないか。日経新聞の困惑は、実は国民の気持ちを表しているのだと思う。
     最後にもう一つ言いたいことがある。原発事故調査員会が期待外れなことである
    お読みと思いますが、田原コラムです。
    反消費税と反原発で選挙は勝てる小沢とほくそえむ
    かつて自民党大幹事長としてやったこと、細川政権をつぶしたこと
    そして育てられた自民党、育てた民主党をつぶそうとする権力闘争至上主義は
    いい加減にしてほしい。

  5. かつて管理人さんに勉強会の参加をお願いしたことがありますが、土曜、日曜もお仕事なので
    残念ながら、と実現には至りませんでした。
    しかし分析、説得の見事さに、ついご了承も得ず、参加者にメール送信しています。
    とうとう明日は、この記事のみをテーマに議論することになりました。
    理系、文系、医者、外資系企業社長、大学教授、政治記者・・・
    自由に議論してもらいます。
    オフレコなのでどこまでご報告出来るかわかりませんが・・・

  6. 小沢一郎は全く評価しません。
    私も、野田首相は頑張っていると思います。
    ローマ皇帝のヴェスパチアヌスになれるかどうかがポイントと思います(『ローマ人
    の物語』の「危機と克服」をご参照)。
    ローマ人の物語の編集者から

  7. 文武両道さん
    コメントありがとうございます。
    このコメントを改めて読み直して、取り敢えず国富論を読んでみたくなりました。恥ずかしながら経済学部を出ていながら読んだことがなかったので。で、amazonで注文した次第です。
    田原さん、最近論説が冴えていますよね。さすが機密費を受け取ったことの無い数少ないジャーナリストの一人ですね。
    ローマ人の物語、ちょうどその前のところで力尽きていたので、ウェスパシアヌス帝のことは財政再建に努めた皇帝というごくごく一般的な知識しか持ち合わせておりません。こちらもまた読書を再開しようかと思いました。
    まだまだ読むべき本がたくさんありますね。

  8. kktfさん
    コメントありがとうございます。
    おっしゃるとおりだと思います。あれだけの天災もそうですが、人災を経たことをどう考えるか。一義的には原発事故だと思いますが、あの人災は首相が間違ったことを決断したのでは無い。緊急時における意思の決定システムがまるで無かったことが原因だということをわかるかも大きな問題だと思います。多数決やいろいろな人の了解を取っている間に、原発は待ってくれず爆発したということだと思います。どういう人間にどういう権限を与えるべきか、そしてその判断をより正しい物にするために、どのような情報が入るようにすべきか。そこについての議論が深まっていないように感じますが、それこそ大事な問題だと思います。野田総理は頑張っていると思いますが、余りにも組織を知らない人たちが民主党には多かったというのが、今回の消費税騒動で改めてわかった気がしますね。

  9. 石原知事の尖閣での行動は?だが、東北への職員派遣を率先した行動は有難かった。
    現在も都職員が現地で頑張ってくれている。
    東北自治体からの計画は大掛かりすぎてそのすべてを認めてしまったため執行率が4%と低くなった。来年に向けて執行率は上がってくるだろう。
    福島第1原発が無事で第2が駄目だった原因を電源喪失だけの問題だったのか、データを公開して国民的議論をする必要がある。原発は安全から原発は危険に180度変わるのはおかしい。もし原発ゼロなら代替エネを具体的に計画しなければならない。
    理学系統は危険を極大にすれば予算がつくと考えているからとにかく稼働は危険と言う。
    工学系は産業のコストを考えるから危険がなければ再稼働に踏み切るべきだと言う。
    リスクをコストを開示しなければ専門的な議論が出来ない。
    世界的には消費税+10%が法人税なので日本の法人税40%はいかにも高い。
    中小企業は消費税を支払えない。現在でも滞納が50%になっているから、制度的に上げても税収が増えるかどうかわからない。
    福島の企業は将来が見えない。夢物語の建設計画に予算をつけて未消化なら企業に直接援助してほしいという声が強い。
    医療崩壊は患者の意識と医療体制の総合医療の軽視にある。東大京大などの医学部が臓器別専門にしたため総合的に診察出来る医師が不足している。総合医療の出来る医師と患者が意思疎通して無駄な医療をしないことが医療費削減につながる。人間ドックの数値管理だけで診療をしている数値重視にも問題がある。数値評価できない心の問題が病気の原因になっている。
    大阪橋下知事への評価は東京で持ち上げられているが低い。候補者の質が低すぎる。
    小選挙区になって小泉のように世襲がますます多くなって政治家の資質が落ちている。
    以上本日の議論でした。管理人さんのレポートは好評です。立候補してほしいとの声。
    本日の出席者は国立大医学部、工学部教授、外資系企業社長、官僚、新聞記者でした。

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