「失敗の本質」を読んで

7月上旬、amazonを見る度に「Kindleシリーズが全て3000円オフ!」という表示が出ていました。
それを見ているうちに洗脳され、そっか7インチで16GBの記憶容量があるタブレットが12,800円とは安いじゃないかということで、うっかりポチッと押してしまいました。
でも7インチって結構持ち運びしやすく。無料の本とかもあって、一気に読書量が増えた気がします。特にKindleで途中まで読むと、AndroidでもiPadでも同じ所まで進めてくれるので、読みやすいんです。
そんな中またもやセールがあり、単行本で2957円、文庫で800円する「失敗の本質 〜日本軍の組織論的研究」が299円で買えたので、早速読んでみることにしました。

この本はミッドウェー、ガダルカナル、インパール作戦、沖縄戦などのケーススタディを元に、日本軍の意思決定や行動様式を組織論の観点で捉え、その後考察も加えているものです。印象的な言葉を取り出すと

「あいまいな戦略目的」
目的が明確でないことは、一瞬の間に重大な判断ミスを誘う
日本軍は六つの作戦のすべてにおいて、作戦目的に関する全軍的一致を確立することに失敗
両社の妥協による両論併記的折衷案が採用されることが多かった
「短期決戦の戦略志向」
「主観的で「帰納的」な戦略策定ー空気の支配」
「狭くて進化のない戦略オプション」
「アンバランスな戦闘技術体系」
「人的ネットワーク偏重の組織構造」
「属人的な組織の統合」
軍隊の持つ戦力とは何か、という基本認識においても米軍は綜合戦力という見方を重視
「学習を軽視した組織」
組織学習にとって不可欠な情報の共有システムも欠如
大東亜戦争中一貫して日本軍は学習を怠った組織→米軍は理論を尊重し、学習を重視
日本軍はときとして事実よりも自らの頭のなかだけで描いた状況を前提に情報を軽視し、戦略合理性を確保できなかった
「プロセスや動機を重視した評価」
★日本軍は、自らの戦略と組織をその環境にマッチさせることに失敗
・組織は環境の変化に合わせて自らの戦略や組織を主体的に変革することができなければいけない
・組織はその成果を通じて既存の知識の強化、修正あるいは棄却と新知識の獲得を行っていく
・適応力のある組織は、環境を利用してたえず組織内に変異、緊張、危機感を発生させている
・軍事組織は、平時から戦時への転換を瞬時に行えるシステムを有していなければならない
・米軍は、南北戦争での体験から第二次大戦では徹底的な能力主義を貫いた
→第一線指揮官に、その要求通りの成果を挙げられない隷下の指揮官を任免する人事権が与えられていた。必要な自律性を与える代わりに業績評価を明確にしていた
・日本軍は結果よりもプロセスや動機を評価した。個々の戦闘においても、戦闘結果よりはリーダーの意図とかやる気が評価された。
→業績評価があいまいであることは、信賞必罰における合理主義を貫徹することを困難にする
★進化は、創造的破壊を伴う「自己超越」現象
★自己変革組織は、その構成要素に方向性を与え、その協働を確保するために統合的な価値あるいはビジョンを持たなければならない
日本的企業組織も、新たな環境変化に対応するために、自己革新能力を創造できるかどうかが問われている

これは昔の日本軍のみならず、日本的な組織全般に言える傾向だと思います。そしてこれをブレイクスルーする人・組織はなかなか見当たらないのが現状です。だからこそこういった傾向があることを頭に入れ、今後の自らの行動に役立たせるようにすることが、いわゆる「歴史を教訓として」学び取ることだと思います。自分も自らを省みると、耳に痛い言葉ばかりです。
かいつまんで言うと、いかに「戦略目的を明確にし、共有する」かが問われているということなのでしょう。お盆休みも終わり、明日からまた仕事が始まりますが、いかに上記のことが出来るか、しっかりと考えてやっていきたいものです。
それにしても電子書籍とは便利なもので、上記の言葉は全てマーカーでチェックしたものです。つまり、紙を汚すこと無く、要点をチェックできるなんて、本当に便利だと感じました。あとはいろいろな書籍がKindle化されればいいのですが・・・。

「「失敗の本質」を読んで」に7件のコメントがあります

  1. 花巻東は千葉君でベスト4に進みました。
    初戦の彦根東からずっと千葉君はカットで粘り四球か内野安打で出塁。
    ただ出塁するだけではなく相手投手に投げさせるボール数が多い。
    今日は板東君160球の内千葉君に40球も投げさせた。
    相手が前進すると佐々木監督は外野越えを指示。これにこたえて長打。
    こういう選手が慶応に欲しい。
    野球が戦術ゲームであることを千葉君の出現で知った。
    状況判断は主観的であってはいけない。
    ぜひ塾野球部にも見習ってほしい。

  2. 終戦記念日にあたって、日本軍の組織的問題を探るという試みが安倍首相にも朝日新聞にも見当たらない。靖国の英霊に対する尊崇の念か日本軍国主義反対かという論点は現代日本においていかなる意義ももたない。むしろ勝算を描かない無能な軍部と戦意高揚お追従の朝日新聞にこそ終戦を自ら決断できぬ日本がアメリカの力でようやく終戦に至った経緯を反省すべきではないか。ポツダム宣言の受託をめぐって大本営参謀本部にいた父が冷静な議論があれば東京大空襲と原爆投下は日本の決意で避けることが可能だったと語っていたことを思い出す。

  3. どうやって千葉君を抑えるか?
    千葉君は大谷君の150キロもカット出来た。
    何と90キロのスローカーブでカラ振りではなく早めにバットに当てさせた。
    完璧に千葉君を抑えた相手投手とベンチに敬服。
    野球ネタをここにもってきて恐縮ですが、
    野球を戦術ゲームと考えてみると
    相手が内野手5人にしたことは実らず、スローカーブが実った千葉対策は面白かった。

  4. ルールあってのゲーム。
    知らなくて残念な花巻東(特に千葉君本人)でした。
    http://www.nikkansports.com/baseball/highschool/news/p-bb-tp3-20130822-1176828.html
    その意味では、ルールを身に付くまで理解して脚光を浴びたのが去年の済々黌。
    (ショートライナー→ファースト ダブルプレーの間にホームイン。 相手アピール無しで得点。)
    「知っていた」「知らなかった」が明暗を分けました。

  5. 藤本君の三振に「カットできないか」とネット裏でOBたちが盛んに言っていたが、
    千葉のカットが違法だとは知りませんでした。
    これから東京に戻ってくる藤本君、横尾君、谷田君、白村君がどれだけ成長したか、
    秋を占うオープン戦を楽しみにしています。

  6. 父と同僚だった陸軍参謀本部情報将校の方をゲストに勉強会・・・
    ① 張作霖爆殺の真相は不明。日本側で暗躍していたのでスターリンか毛沢東による犯行?
    ② 米国との間では秘密協定があって満州の権益は日本に認める代わりにフィリピンの権益は米国に認める。満州の権益を要求し始めた米国の方針転換の背後にはソ連の戦略があった。
    ③ ハルノートは最初、日本に厳しくなかった。ソ連がエネルギー条項を付け加えるように迫った。そうなれば日本が戦争をしかけざるをえなくなることをソ連は予見していた。
    ④ 米国の参戦は対日本に貼り付けておいた陸軍をナチスに回すことに役だった。対独戦の勝利。
    ⑤ 日本はソ連の中立姿勢を甘くも最後まで信じていた。参謀本部では対ソ情報が最も重視されていたにもかかわらず、対ソ戦ではなく対米戦を選択したのは愚かだった。
    ⑥ シンガポール陥落前にシンガポールに日本軍が侵攻しなければ英国が米国との停戦仲介に乗り出すと提案された、日本としてはこの提案は渡りに船だった。ここで停戦に応じるべきだった。
    ⑦ 現代の情報戦を観るとイスラエルの圧倒的勝利だ。イスラエルはアメリカのように露見する情報戦はやらない。次いで優秀なのは戦前から日本がやられまくったロシア。最低ランクはアメリカと日本。アメリカに倣った組織をつくってもアメリカ以上に情報感度の鈍い日本では成功しない。

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