唐突ですが、我々の世代は、特に男子は「機動戦士ガンダム」を見て育った人が多いと思います。
私は残念ながら最初のガンダムしか見ませんでしたが、今から思うにあのアニメの影響というのは自分の心に確実にあったなと。
それは何かというと「正義というのは絶対的ではなく相対的なもの」ということです。
アニメというと勧善懲悪ものが多かった時代、主人公と相手側、それぞれに背景があり、それぞれがそれぞれの大義に従って戦ったり、その枠組みを避けようとしたり、結局欲望が身を滅ぼしたりと、およそ子供向けらしからぬ内容でした。
なので絶対的な「正義」というものに疑問を感じるところが、少なくとも自分にはあります。
また、その頃読んだ漫画に「アドルフに告ぐ」というのもありました。
アドルフ・ヒトラーを基軸に、2人のアドルフという名前を持った男たちが数奇な運命にもてあそばれながら生きていく物語でした。ここで手塚治虫は「正義」というものに対して、大きな疑問を投げかけています。「正義とはなんだ?」と。この物語の中でナチスの正義、ユダヤの正義、日本の正義が入り乱れ、登場人物たちの人間性そのものを破壊していってしまうからです。
今、世の中ではいろいろな正義が振りかざされています。民主主義、資本主義などから始まり政治の倫理、食品業界のモラル、建築確認の厳格化、などなどです。ニュースキャスターは正義をもって常に社会に憤り、街角の声もその枠組みの中で発言する。
それのひとつひとつを自分で咀嚼して考え、おのれの意見を持った上で討論するなら、素晴らしいことです。ただ残念ながら私も含めて結局テレビのコメンテーターが言っているようなことの繰り返しをしたりして、さも1億総評論家のごとく振る舞っていますが、それは「多事争論」にはならず、ただのおしゃべりになってしまっています。
自分の頭で本質を考えないと、「ユダヤ人絶滅こそがドイツ民族の使命だ!」のような恐ろしい言葉ですら、普通に支持してしまうこともあり得るのです。だってそれが正義だと思ってしまうかもしれないので。
いつもコメントを頂戴する文武両道さんから、掲示板で起こった悲しい出来事、会社員時代の出来事などのお話をいただきました。多分そのお話に登場してくる皆さんは、その時々の正義とされるものを咀嚼せず考え込まず使っていたのでそのようなことが起こってしまったのでしょう。
正義は自らの信念の中にあります。そういった意味では絶対的ですが、その正義というものは全ての立場にとっても絶対的なものではけっしてない。むしろひとりひとり自分にとっての正義というのは違うものだと思います。自分の考える正義の賛同者を増やそうと語り合うのはいいのでしょうが、相手に自分の正義を強制するのはお互いの人間性の放棄だと思います。
そういったことを考えているときに福澤諭吉の著作である「学問のすすめ」とか「文明論之概略」とかは、心の琴線に響きますね。文武両道さんが丸山真男の講演を聞いて何かを感じたように、私も文武両道さんが掲示板に「文明論之概略」についての文章を書いて下さったことから、その本を読む気になり、実際読んで感嘆しました。その「何か」を私に伝えていただいた訳です。本当にありがとうございました。
これからも様々な刺激をいろいろな人から受け、自分なりの信念というものが少しでも固まったら、少しは今まで生きてきた意味が出てくるのかな?と思っています。これからもみなさま、どうぞよろしくお願いします。
げんきさんのコメント、感謝いたします。
独立自尊さん、ありがとうございます。
一言、申し上げておきますと、
普通部、塾高、慶応と進学された方に偏見をもっている
わけではありません。
独立自尊さんを初め、素晴らしい方が多い。
受験勉強に毒されていないので素直な感受性、発想をもって
おられる方に触発される体験を幾度もしています。
あくまでも「誰がユダヤ人か」を探索することが
あってはならない、ということです。
独立さんの公平無私、バランス感覚、
私の答えにくい問いにいつも真摯に真正面から答えてくださる。
感謝しています。
正義を語って、国益は考えない?
何ともわけのわからない事件です。
あの耐震偽造のアバグループの懸賞論文。
「公になってしまった」と本人は言っているが、
アバグループがわざわざ記者発表をした。
それを本人が知らなかった?
せめて産経の正論大賞なら大騒ぎしてもいいが、
大新聞、大雑誌のいずれでもない。
それが結局、社説にまで取り上げられたのだから、
本人は満足かも?
中国やソ連の陰謀までは意図がわかるが、
空では最も重要なアメリカの陰謀まで持ち出すのは、
日米同盟への配慮がなかったのか?
民主党幹事長が本人とアバの社長が揃って写真が
ネットに公開されているが、
本当は民主党潰し?
文武両道さん
コメントありがとうございます。
こちらこそいつも温かいご意見であったり、含蓄のある言葉だったり、問題提起をしていただいたりで、本当にありがとうございます。
普通であれば触れ合うことはなかなか無いでしょうに、ネットのお陰でこういったつながりも出来てくるのですね。
航空幕僚長の話、私も首を傾げました。
気になったのは「言論の自由」ということを彼が説いたこと。
軍事力を持つ組織は、一度自らの意志を持てば、相手に対して自分の意志を強制できることは数多の歴史が証明しています。なのでシビリアン・コントロールが生まれたわけで、敢えて軍人と申しますが、軍人が政治的発言をするということは自ら律しなければ行けないと思います。
これは個人の権利である「言論の自由」とは全く性質が違うものに思えるのです。
APAグループに関して言えば、特にコメント出来るような知識はありません。ただ、以前の耐震問題の時に、女社長と銘打った方が泣いて記者会見していたのを見て違和感を覚えたことはあります。また、実質的な経営者が彼女の夫だということにも違和感は覚えています。
30代から40代にかけて会社が中東の仕事をおっかけていたので、寺島実郎さんや浅井信雄さんと勉強会で研鑚させていただきました。
ところが海外での仕事が減少するにつれて今度は畑違いの理系のシンクタンクに出向させられたり、戻ってきて技術研究所で講演するということになっていきました。
建設会社に入ったのも偶然ですし、海外の調査を命じられることも、理系の技術を調査させられることも全く予期していませんでした。
もっとも技術研究所での私の講演を企画した人は、アメリカのシンクタンクで最先端の技術調査にあたっているとき、寺島さんが先に調査していたとビックリしていましたが・・・。
当初は銀行や文系のシンクタンクの人に占められていた私塾が、いつの間にか理系の人に占められています。
彼らは殆ど文系の本は読んだことがない、その専門では著名な人ですが、文明論之概略や三酔人経綸問答、日本政治史研究など、超多忙のなか精読してきます。
私が著者に肩入れし過ぎると冷静に反論してきます。余分な文系の先入観がないのです。
学歴や専攻をとやかく言うのは好きではないのですが、東大の理系の人は、事実に即した素直な分析をするという印象をもっています。
彼らは「正義」ではなく「真理」を探究しているからという気がしています。
文武両道さん
コメントありがとうございます。
さて、物事を見るとき一番大事なのはまさに正義ではなく真理を追い求める姿勢だと思います。つまり主観的な考えより、客観的な事実です。
ただし物事を決断するときは、逆に主観的な考えが必要だと思います。つまり自分なりの正義を構築しないと決断を貫けないと思うからです。
このバランスを意識して、冷静な頭と熱い心を持って物事に対処することが大事かなと感じています。
そんなことを30代から40代、そして今に至るまで文武両道さんは為されてきたんだろうなあと思っています。