新型コロナウイルスと中国と習近平

2023年も始まりましたが、未だ収まらない新型コロナウイルス。

2019年の年の瀬辺りから始まり、今また中国は政策の転換点を迎えているように見えますが、これを定点観測しながら見ると、権威主義的な体制の機能不全に陥る一つの典型を見ているように感じます。ちょっとそれについて書いてみようと思います。

 

第一段階 情報公開の不十分による初期感染防止の失敗

2019年12月

中国の武漢にて、肺炎と思われる症状にかかる人が続出。

 

第二段階 民衆の高まる不満。事態の深刻さに気付く中央指導部と無謬性のバランス。海外には適切な情報の開示を行わず、通常の往来を続けさせる

2020年1月

危機を訴える医師。なかなか動かない地方政府に対しての不満がSNS(ウェイボーとか)を中心に拡散。

武漢での感染状況に改善が見られず、情報公開も遅れていた。武漢市の面子として、伝染病が収まらないことは不都合な真実だったのでしょう。このことに批判が高まると、危機感を抱いた習近平政権は巻き返しを図り、習近平政権は決して初動が遅れていないことをアピールすることに躍起となる。また地方の報告が遅いから把握に時間がかかり、知ったらすぐに対応したとするため、習近平の地方視察の日程との整合性も取る。

中国は厳格な都市封鎖と健康コード活用(ITによる市民監視とも言える)によって、徹底的な封じ込めを指向。

しかしながら、海外との往来には制限をかけず、通常モード。

 

第三段階 強権的な対応と、感染封じ込め成功アピールで自由民主主義社会に対しての体制優位を誇示。世界的流行という局面で、中国が世界への感染拡大防止を失敗したことより、寧ろ中国が感染拡大予防の先頭に立っていることにする大胆な論調変更を指向。

2020年2月

党中央政府がしっかりと対応していることを印象づけるためもあり、短期間での対策病院の建設をアピール。

 

2020年3月

WHOが新型コロナ(Covid-19)をパンデミックと認定。世界的流行と共に世界中で死者急増。

 

中国指導部は抑え込みに成功したとアピールし始め、寧ろ自分の国の体制の方が欧米より優れていると主張し出す。

 

新型肺炎の名称を俗称であった武漢肺炎からCovid-19にすることに成功。それと共に、新型コロナウィルスへの主導権と発言権を握る方向に。アメリカ起源説まで唱える始末。

 

2020年4月

抑え込みに成功した象徴的な出来事として最初に流行したとされる武漢で2ヶ月半ぶりに都市封鎖解除。

 

第四段階 中国は欧米諸国に対して政治経済体制の優位性を誇示。中国国民も自らの国の体制の優位性を実感。

 

第五段階 習近平異例の三期目を務める理由としての圧倒的な実績としてゼロコロナ政策を掲げているため、ゼロコロナ政策維持

 

第六段階 なんとか党大会で三期目を確定するためにゼロコロナを維持しようとするも、各方面で見られた綻び

 

第七段階 高まる民衆の不満と、それを受け中央は地方政府に責を負わせた上で政策転換

 

第八段階 ゼロコロナ政策を転換した途端、感染爆発とも見られる状況となる

 

第九段階 感染拡大が続く中で、唐突な渡航制限解除

といった具合になっているかと。第一段階から第五段階と進んだ後、また元に戻って同じことのループに見えてなりません。

ここで私見を述べます。

習近平政権は、何のかんの言って民を大変恐れています。民の支持を得ることに重きを置き、そしてその支持の源泉は習近平個人のカリスマ。すなわち、彼の能力であり判断であり実績であり、その根本にある彼の人柄に負わせようとしているように見えます。

なので、習近平が間違えるなどあってはならないことです。また、中華民族の偉大な復興を成し遂げている過程の今は、従来の先進国よりも中国が優れていることを殊更に強調しようとしているようにも見えます。

そこで起こった今回の新型コロナウィルス。もう少し有り体に書いてみると、

 

公衆衛生上の問題が発生するも(中央から睨まれたくないので)情報公開がされない→

国内で大流行が発生し民の不満が高まる→

こんなことが起こったのはまずは地方のせいにする。また、問題を世界に広げる(渡航制限を行わず、他国の入管体制についてはクレームを入れる)ことで中国の国内問題から国際問題へと転化させる。→

国内では流行が発生している地域では人権を無視してでも強圧的な政策で封じ込める→

合意の形成に時間のかかる民主主義体制に対する優位性を強調し、寧ろ中国は優れていると誇示→

最初は現状に適した対策であったかも知れないが、習近平の無謬性と密接に絡んでしまったため、政策転換がしづらく状況に合っていない対策となる。その間に民主主義体制の諸国がコロナを克服してくる→

自国の体制が優れていると思った国民に疑念と不満が高まってくる→

そのような不満を高めるのは地方政府が中央政府の意図を理解していないからとまずは地方のせいする→

また問題を世界に広げる(渡航制限を行わず、他国の入管体制についてはクレームを入れる)←今ココ

 

みたいな流れでは無いでしょうか?となると、世界に問題が再度広がってしまえば、また独自の政策(ある種の人権無視)を取り、再び体制の優位性を誇示という夢よもう一度の政策にも見えてしまうのです。

人口の数がハンパない中国としては、殆どの問題は対外問題のように見えて国内問題ということが多いようです。その中で我々としては、相手国が何を指向して行動しているかを読み取り、お付き合いすべき部分ではお付き合いするとしても、こちらが損をしてまでお付き合いする意味は少ないと思うのです。ちょうど天安門事件が発生した後、欧米諸国が往来を止めていく中、孤立させてはいけないと強く主張したのが当時の日本。しかし見返りとして得られたのは、より中国共産党の正統性を高めるために始まった反日教育ですから。今の局面であれば、まずは何としても感染爆発している中国からの流入を是が非でも止めることこそが一番大事と愚考する次第です。

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