書評「大東亜会議の真実」



大東亜会議の真実 アジアの解放と独立を目指して
PHP新書 294
近頃読んだ本の中でも、興味深く読み切った本です。
最近のニュースでも「従軍慰安婦」とかの話題が出ていますが、この問題に関してアメリカが擁護するわけはないでしょう。アメリカとしても戦前の日本はそれこそ邪悪な帝国、「悪の枢軸」だということにしていますから。そこを否定すると、アメリカの第2次世界大戦そのものの正邪の問題になるので、間違っても肯定するわけはないと思います。
つまり歴史とは、その歴史に密接な利害を有する人たちがいる限り、公平な史観というのは難しいのだと思います。特にどこかの国の大統領までもが口にする「正しい歴史観」「人類普遍の原理原則」などというのはありえないのだっとも思います。
ちょっと前置きが長くなりましたが、そんなことを考えながら読みました。
大東亜会議は昭和18年11月、戦時下の東京にタイ、ビルマ、インド、フィリピン、中国、満州国の六首脳が集まって開催されたものです。正直この会議は文中でも述べられているとおり「アジアの傀儡を集めた茶番劇」のように思っていました。しかし、集まった人物のそれまでの経歴、その後の経歴を改めて読んでみると、そんな簡単な人物ではとてもない。
この文中で登場する人物達は今の日本にも通じる痛烈な批判を様々な場所でしています。
中国南京政府の汪兆銘はこう言っています。
「日本政府に対して言いたいことは山ほどあるが要約すると3つの不になる。『上位不貫徹、前後不接連,左右不連携』。上役がよろしいと言っても下が聞かん。前任者が言ったことを後任者はそんなことは俺は全然知らんと問題にしない。左右の連携も全く欠けている。外務省がいいことを言ってくれたと当てにしていると、一つも陸軍は聞いてくれない。外務省が言ったことなど俺が知るかという態度だと。これが日本の悪いところ」
フィリピン代表のホセ・パシアノ・ラウレルはこう言っています。
「率直に言って、日本はフィリピン人の心理をつかむに失敗しました。フィリピン民衆はこの3年間、初めて多数の日本人と接触して残忍なる民族なりとの観念を抱くに至りました。その掲げる理想は我々が共鳴出来るものでしたが、やっていることは民衆の生活を顧みず、かえって不安を生じさせるものであり、軍に対する不平不満の声は日に日に増し国中に広がるほどでした。特に憲兵の苛烈横暴に対する反感は政府要人に至るまで広がり、とうてい救いがたいものになっていました。」
「日本はなぜ、かつて台湾総督、児玉源太郎が台湾を統治した方法に則り、力をもって強圧するのではなく、人情をもってフィリピン民衆に臨まなかったのか?これが日本の失敗といわずしてなんであろうか」
満州国の張景恵はこう言っています。
「日本人ほど便利な民族はいないではないか。権威さえ与えておけば、安月給で夜中まで働く」
「日本の軍隊は世界一強いが、日本の軍人は戦争の意義を知らない。戦争は国と国との取引のひとつの手段に過ぎないものだ。日本の軍人は戦争と個人の果たし合いを混同して、どちらかが息の根を止めるまで戦おうとする」
「日本は正しいことをやったけれども、しかしうるさいなあ」
自由インドのチャンドラ・ボースはこう言っています。
「日本という国が偉いことは認める。良い兵隊がいるし、いい技術者もいて、万事結構である。ただし日本には良き政治家がいない。これは致命的かも知れない」
ビルマのバー・モウはこう言っています。
「歴史的に見るならば、日本ほどアジアを白人支配から離脱させることに貢献した国はない。しかしまたその解放を助けたり、あるいは多くの事柄に対して範を示してやったりした諸国民そのものから日本ほど誤解を受けている国はない」
大東亜会議で採択された「大東亜共同宣言」は内容そのものは大変理想的なものでした。「しかし軍が現地でやったことがすべてを台無しにした。皆が日本を信じたのに、それを日本が裏切ったんだ。」というわけです。
第二次世界大戦に対する総括は本来「戦争は国益の衝突」だったものに対して、「民主主義対ファシズム」という対立図式を硬直的・教条的に当てはめることによって、その真相を極めて単純化してしまいました。そのためはっきりと「勝てば官軍負ければ賊軍」を地でいくようなものになっています。
しかし各国それぞれがそれぞれの事情を抱え、その国なりに一生懸命生きていたことを考えると、日本のみならず世界が第二次世界大戦の意味をもう一度考え直す必要があるのではと思います。つまり単純な善玉と悪玉の戦いと見るのではなく。
変に日本を美化するわけでもなく、かといって自虐的な言い回しをするわけでもない。そんな距離感が、とても説得力をもったものにこの本をしているのだと思います。
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